月経痛~漢方の教科書〜
\体質を知ってよくしよう/
月経痛
古来「月経」は、毎月定期的に来ることから「月信」「月事」「月水」と呼ばれていました。
月の満ち欠けになぞらえた身体のリズムを知って
それぞれにあった養生方法を学びましょう。
女性と月経
月の満ち欠けや潮の満干と同じように、女性は月のリズムで月経を迎えるため「女性=陰、月の類」と考えられるようになりました。
身体において“陰”は血などの潤いを指し、陰液と呼ばれます。陰液つまり“血”は、月経・妊娠・出産・哺乳といった機能を持つ女性にとって欠かせない要素で血の不足や巡りの悪さは様々な不調を引き起こす原因になると考えます。
血の巡りと女性の身体
血の巡りの悪さからくる不調のひとつに月経痛があります。
漢方では痛みが無いことを正常とし、痛みを伴う月経を「痛経」と呼びます。日常生活や仕事に差し支えるほどの痛み、鎮痛剤を手放せないほどの強い痛みのある場合は、子宮内膜症や子宮腺筋症など病気の可能性も考えられます。
月経痛は、ストレスや生活習慣、季節や気候などの環境要素、個々の体質などがそれぞれ影響し、身体の成分である「気」「血」の不足や停滞を生じたことで引き起こされるため、まずは自分の状態を知り、生活習慣を整え、体質改善を目指しましょう。
月経痛とタイプ別養生
1,気血の巡りが悪いタイプ
- 【気滞血瘀】
気血の滞りによって引き起こされる
-
チェック
□月経前、月経中に下腹部の張りや痛みがある
□胸や両脇の張りや痛みがある
□経血に塊が混じる
□経血の色が暗い
□ストレスを感じやすい
□特に月経前にイライラしやすいポイント
気分や情緒を安定させる五臓の“肝”の働きが、ストレスによって停滞し、気が滞った状態。(気滞)
この気滞によって血の巡りが悪くなり(瘀血)、月経痛を引き起こします。鎮痛剤を飲んでも効かない重たい痛みや内膜症につながることもあります。適度に身体を動かし気血巡らせることを心がけましょう。
養生
・ストレスを上手に発散させることが大切
・海山川など自然のあるところでリフレッシュしましょう
・深い呼吸で緊張をほぐしましょうおすすめ食養生
ミントティーやジャスミン茶、柑橘など、香りの力で癒やします
青梗菜、黒木耳、黒豆などで血を巡らせましょう
2,子宮冷えタイプ
- 【寒邪】
寒邪によって引き起こされる - チェック
□月経前、月経中に下腹部の冷えや痛みがある
□冷えると痛みが悪化し、温めると楽になる
□経血に塊が混じる
□経血の量は少なく色は暗い
□手足が冷たい
□冷えると下痢をする
ポイント
冬の寒さや冷房など、外からの冷えや、薄着、冷たいものの飲食、元々の体質による長引く冷えが体内に溜まり、子宮が冷えた状態。冷えから血の巡りが悪くなり月経痛を引き起こします。温めると痛みが軽減することが特徴です。特に下半身を温めてポカポカ巡らせることを心がけましょう。
養生
・とにかく身体を温めることが大切
・足湯で三陰交まで浸かりましょう
・腹巻でお腹や子宮を保温
・料理やお茶にスパイスを上手に使って芯から温めましょう
おすすめ食養生
シナモン、八角、山椒、羊肉、よもぎ
3,気血が足りないタイプ
- 【気血不足】
気血の不足によって引き起こされる - チェック
□月経の後半に痛みが強くなる
□シクシク(弱い)痛み、さすったり押さえると楽になる
□月経周期が長い
□経血の量が少なく、色は薄い
□立ちくらみやめまいがある
□疲労感が強いポイント
虚弱体質や過度の疲労により、元気の源である“気”と心身の栄養分である“血”が不足している状態。子宮に十分な栄養がいきわたらないことで月経痛を引き起こします。月経の後半から月経後2〜3日にわたり痛みが続くことが特徴です。過労は避け、身体に負担をかけない暮らし方を心がけましょう。
養生
・とにかく無理はしない
・夜は早めに寝る
・激しい運動やサウナなど、汗をたくさんかくことは避ける
・身体を冷やさないようにするおすすめ食養生
山芋、きのこ類、鶏肉、豚肉、ニンジン、ほうれん草、高麗人参、なつめ、クコの実
まとめ
月経痛の緩和・改善には、上記のようにそれぞれのタイプに合った養生がおすすめですが、ここでは痛みをやわらげる簡単養生をご紹介します。
「よもぎ」と聞くと草餅をイメージされる方も多いと思いますが、お灸や韓国よもぎ蒸しの原料としても有名です。身体を温め、血を巡らせる働きの他、鎮痛作用もあるため、月経痛や関節痛にも応用しやすい素材。この乾燥よもぎを使った「よもぎ茶」と「足湯」は自信を持っておすすめします。
☆よもぎ茶・・・急須かティーポットに乾燥よもぎを入れ、熱湯を注ぐだけで出来上がり。
気血不足の方はなつめを合わせるとなお良し。
☆よもぎ足湯・・・大きめの鍋ややかんで、よもぎ茶を作り、足湯バケツに注ぐ。
42度くらいになるように水を加えるなど温度調節をして浸かりましょう。
養生で間に合わない方は、漢方薬や鍼灸治療を利用するのも良いですよ。