検査では見えない不調に向き合うとき
漢方薬店kampo’s薬剤師の鹿島絵里です。
「病気じゃないけど、健康だと言い切るには自信がない」と感じる方が経験する様々な不調。検査結果には表れないその不調の正体を、漢方というフィルターを通して読み解いてみましょう。
Contents
“不調の正体”を漢方で読み解く
「健康診断では“問題なし”なのに、毎日がしんどい」
「病院に行っても、血液検査も画像診断も異常なし。でも体はつらいまま」
「気のせいかも、と言われたけれど、そんな簡単に片づけられない」
——こんな経験に思い当たる節はありませんか?

熱もないし、数値も正常。でも、たしかに“調子が悪い”。
それはあなたの感じ方が過敏なのではなく、今の医療では拾いきれない“からだの不調”が、そこに存在しているのかもしれません。
東洋医学では、そうした「検査ではわからないけれど、明らかに体がしんどい状態」を“未病みびょう”ととらえます。
そしてそれを、“体質”という視点から読み解き、対処していくのが漢方の役割です。
「どこが悪いのか分からない」を、体質から見ていく
東洋医学では、からだの状態を「五臓六腑」や「気き血けつ水すい」といったバランスの観点から見立てます。
たとえば、こんな不調に思い当たることはありませんか?
- 朝からだるく、やる気が出ない(気虚)
- 冷房に当たるとお腹を壊す(陽虚)
- いつも手足が冷え、生理痛が重い(血虚・瘀血)
- むくみやすく、雨の日は頭痛がひどい(水滞)
- 不安感やイライラが続く(月経前になると悪化する)(肝の不調)
こうした症状は、現代医学では病名がつかない場合が多く、検査も正常範囲内。
でも、漢方ではそれらを単なる“自覚症状”として見逃すのではなく、「体の内側で起きているバランスの乱れのサイン」としてとらえます。
大切なのは、今起きている不調が、体のどの働きに由来しているのか?
これを“証しょう”と呼ばれる漢方独自の診断軸で見極めていきます。
「病気」になる前に、“兆し”を整える
不調を「気のせい」で終わらせず、「兆し」としてキャッチする。それが東洋医学が得意とするアプローチです。

たとえば、最近ご相談が多いのが、次のようなケースです。
- 「食欲がないのに、胃の検査では異常なし」→ 脾の虚弱(=消化力の低下)
- 「疲れているのに寝つけない。朝はぼーっとする」→ 気虚・心脾両虚
- 「生理が来ると寝込むほどつらい。でも婦人科では異常なし」→ 血虚+瘀血体質
- 「雨の日は頭が重くて使い物にならない」→ 湿邪(水のめぐりの滞り)
これらは、数値では見えないけれど、日常をじわじわと苦しめる不調たち。そしてそれぞれに、漢方ならではの視点と処方があります。
体質や季節、生活環境によって組み立てる処方は、まさに“オーダーメイド”。検査では見つからなかった不調の正体が、そこではじめて浮かび上がってくるのです。
「疲れているはずなのに眠れない」——40代女性のご相談より
フルタイムで働きながら中学生のお子さんを育てる、40代前半の女性。
「最近ずっと、朝から体が重くて。疲れているはずなのに眠れないし、寝ても全然回復した感じがしないんです」
胃がもたれて食欲がわかず、月経前になるとイライラや落ち込みが強くなる。病院で検査を受けても「異常なし」。けれど、このままでは日常生活に支障が出ると感じ、漢方相談に来られました。
お話をうかがうと、気力・体力のベースをつくる「脾」が弱っている状態に加え、心(精神)を養う血も不足し、気のめぐりも滞っている様子。漢方では、これを「心脾両虚」+「気滞」と見立てます。
この方には、気血を補いながら気のめぐりも整える「加味帰脾湯かみきひとう」を提案しました。
心と脾を同時にケアできる処方で、過労やストレスによる疲労、不眠、月経前の不調が重なる方にぴったりの処方です。
竜眼肉 ライチの仲間の龍眼肉。 お味もライチに近く、甘みが凝縮してあり1粒でも満足感のあるドライフルーツ。 ミネラルを多…
1か月後、「久しぶりに朝起きて“今日いけそう”と思えました」とのご報告が。
さらに服用を続けていくと「以前ほどイライラしなくなってきて、子どもにも優しく接する余裕が出てきた気がします」と、笑顔で話されていたのがとても印象的でした。
その「しんどさ」に、意味がある
もしあなたが、
「どこも悪くないはずなのに、なんだかつらい」
「不調を相談しても、いつも“異常なし”で終わってしまう」
「原因がわからないから、対策も取れずにいる」
——そんな状況にあるのなら、
一度、体の声を“漢方の目”で聞いてみるという選択肢を思い出してみてください。
漢方相談では、あなたの体質・生活・感覚まで含めて、ゆっくりとお話をうかがいながら、不調の背景を丁寧にひもといていきます。
見えないからこそ、放っておいてはいけない。その「しんどさ」をあなたの体が発するのには、理由があるのです。

「まだ病気じゃないけど、もう健康でもない」
それが、“はじめどき”です。
「病名がつかないから治療の対象にならない」
そんな風に、不調のまま毎日をがんばっている方が、実はとても多いのが今の日本です。
でも、病気になる前に手を打つのが、本来の“医療”のあり方ではないでしょうか。
「まだ病気じゃないけど、もう健康でもない」——
そのグレーゾーンにいる今こそが、からだを整える“はじめどき”なのです。
私たちは、あなたの体質と日常に寄り添いながら、無理のない整え方をご提案します。
どうぞ気軽にご相談ください。



