タイプ別ケアと漢方の知恵
漢方薬店kampo’s薬剤師の鹿島絵里です。現代ならではの目線と評価で、漢方の役立つ情報を発信していきます。
妊娠を望む体づくりに欠かせないのが冷え対策。
冷えは単なる体質ではなく、子宮や卵巣の血流、ホルモン分泌など妊娠力そのものに関わります。性交痛が生じやすくなることも、妊活にはマイナスです。
漢方では冷えの現れ方をタイプ別にとらえ、それぞれ異なるアプローチをします。ここでは妊活に大きく影響する3タイプの冷えを詳しく解説します。
Contents
1. 足腰が冷え、下腹部が痛むタイプ
特徴
虚弱体質の冷え性で、通年、手、足、腰に冷えを感じます。夏は冷房がつらく、羽織り物が欠かせません。秋から冬は電気毛布や靴下が必要になり、しもやけの心配もあります。冷えることで下腹部が痛む、突っ張る、ガスがたまるなどの症状が出やすく、逆にあたためることで緩和します。

漢方では「血(けつ)不足」や「陽気不足」による強い冷え体質と考えます。
代表的な処方が当帰四逆湯とうきしぎゃくとう。症状が少し緩和してきたら当帰芍薬散とうきしゃくやくさんもいいでしょう。
血を増やし体を温める力を補って、子宮や手足の先までしっかり血を巡らせます。
妊活への影響
子宮・卵巣が十分に温まらず、卵子の育ちや着床が妨げられる可能性があります。
基礎体温が全体的に低めで、高温期が短い方に多く見られます。
- 温め食材:羊肉、黒ごま、生姜、くるみなどがおすすめ。
- 生活:入浴習慣はマスト。足湯をプラスできるといい。軽いスポーツで血行を促す。ホットカーペットなど足元からあたためられる暖房器具を使うようにして、衣食住のどの場面でも冷えを遠ざける意識を。
2. 胃腸が弱いタイプ
特徴
食欲がなく、元気が出にくいのが特徴です。消化が弱いため下痢や軟便になりやすく、冷たい飲み物や生ものを摂ると症状が悪化します。疲れやすく、体全体がだるく感じることもあります。
漢方では脾胃ひいの弱さによるエネルギー不足が冷えの原因と考えられます。胃腸が弱い体質の人の冷えは、早食いやストレスによっても悪化するので注意が必要です。水分代謝が下手な体質でもあるので、もし胃がぽちゃぽちゃするようならキャパオーバーと自覚してすぐに対策をしましょう。
代表的な処方は人参湯にんじんとう、真武湯しんぶとう、小建中湯しょうけんちゅうとうで、体の内側から熱を生み、胃腸を整えることで全身の温まりやすさを改善します。

妊活への影響
体の熱を作る力が弱いため、子宮や卵巣を温める熱量が不足し、着床環境が整いにくくなります。基礎体温の低温期が長く、高温期が短い方に見られます。
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- 温め食材:温かいスープや煮込み料理、かぼちゃ、もち米、生姜など。
- 生活:よく噛んでゆっくり食べる。食事以外で摂る水分が1日1リットルを超える場合は、体質に合わせて調整する(水分を控えるというよりも、胃腸が無理なく消化・吸収できる量に整えることが大切。適量が1リットル以上のことももちろんある)。
3. 冷えと瘀血タイプ
特徴
太ももやおしり、下腹部など体の奥が冷えやすいのが特徴です。顔や上半身がほてることもあり、生理痛が強く、経血に塊が出ることがあります。PMSや肩こり、頭痛などの訴えが多く、ガス腹や性交痛などのお悩みを伴うことも。
体の柔軟性に乏しく、筋肉にふれるとガチガチ、パンパン。全体的に硬くなりやすい傾向があります。

漢方では血流の滞り(瘀血)による冷えと考えられます。冷えと瘀血が、唇・手・かかとの乾燥、体の中心部の冷えなどの形であらわれます。特に生理中は体温が下がり不調が出やすい時です。冷えることで瘀血を悪化させ、PMSや肥満の下地を作ることもあるので注意が必要です。
代表的な処方は折衝飲せっしょういんや温経湯うんけいとうで、血を動かして巡りを改善し、子宮や卵巣まで血を届けることを目的とします。
妊活への影響
血流が滞るため、卵子の質や着床環境に影響することがあります。生理不順や排卵障害がみられる場合もあります。
- 温め食材:黒豆、玉ねぎ、シナモン、ローズティーなど、血の巡りを促す食材。
- 生活:レッグウォーマーや腹巻、電気式のひざ掛けなどで下半身の冷えを予防する。短時間でも構わないので、こまめなストレッチやマッサージで体の硬さ・筋肉の硬さをほぐしておく。
妊活中に共通して意識したい冷え対策
内臓を冷やさない
妊活中は冷えのタイプを問わず、まず「内臓を冷やさない」ことが基本です。内臓を冷やすということは、からだの持つ基本的な機能を自ら抑え込んでしまうということです。
お刺身や生野菜サラダ、果物などの生もの、また冷たい飲み物や食べ物は普段なにげなく口にしがち。妊活中は控えめにし、できるだけ温かい料理や飲み物を選びましょう。
下半身をしっかり保温
腹巻きやラップスカート、レッグウォーマー、湯たんぽなどを活用し、腰回りや足元を常に温めます。「気持ちいい」と感じるところがちょうどいいところ。暑くて汗をかくほどはやり過ぎですのでそれも注意。
もし汗をかいてそのままにすると、却って冷えの原因になります。その場合は必要に応じて下着を着替えることも億劫がらないでくださいね。

こまめな運動と入浴
軽い運動やストレッチ、入浴は血流を促し、体を温める効果があります。滞りを断ち切るためには「まとめて」よりも「こまめに」ケアすることがポイントです。短時間で簡単なケアでいいので、滞った状態を長時間続けてしまわないようにしましょう。

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「私の冷えはどのタイプだろう?」と少し気になった方もいるのではないでしょうか。冷えは単なる寒さではなく、子宮や卵巣の血流、ホルモンバランス、妊娠力そのものに深く関わっています。
自分に合ったケアや漢方を知ることで、体の芯から温まり、毎日の過ごしやすさも変わってきます。まずは専門家と一緒に、あなたの体質や冷えのタイプを確認してみませんか?オンライン相談や体質チェックから、気軽に始められます。LINEより友達登録をしてお申し込みください。


