管理栄養士・国際中医薬膳師の趙みどりです今回は身近な果物、みかんの皮についてまとめてみました。
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捨てるにはもったいない!みかんの皮「橘皮」の効能
冬になると食べたくなるみかん。子供の頃、こたつにみかんは冬の風物詩でした。1個100g程度で約80kcal、炭水化物、糖質を含むので食べ過ぎ注意ですが、ビタミンA,ビタミンC,カルシウム、カリウム、食物繊維も豊富で水分量も多いので、乾燥する冬にはぴったりの果物ですね。
外側の皮をむいて、中身を食べて皮は捨てるというのが普通ですが、ちょっと待ってください。みかんの皮に意外な効能があるのをご存じでしょうか?
中医学ではみかんは生薬として扱われます。特に皮の部分は橘皮きっぴと呼ばれ、肺や胃に働きかけ、肺を潤してくれ、また、気を巡らせてくれると言われています。
(すこやかな身体をつくる薬膳食材大全 2020.11.5 三松堂株式会社)
韓方ウィーク展示にはみかんの皮がズラリ!!
毎年5月に駐日韓国文化院にて開催される、東医宝鑑アカデミー主催の「韓方ウィーク」。こちらではたくさんの陳皮、橘皮が展示されていました。
くり抜いて中にプーアール茶や生薬を詰めたものや糸で縫って飾りのようにしているものもあり見ているだけでも楽しめました。
経年変化を示した展示物もありました。1年より5年、5年より10年とみかんの皮の色も茶色くなり味わいが増していきます。興味のある方はぜひ一度経年変化も試してみてください。
自宅でも簡単に作れるお茶用みかんの皮
無農薬栽培、ノンワックスのみかんが手に入ったらぜひお茶にしてみましょう。
皮をむいて天日干し、またはフードドライヤーで乾燥させます。湿気の多い時期はフードドライヤーがあると便利です。温度や時間の調整は機種にもよりますので説明書を参考にお試しください。冬の乾燥した時期であれば、野菜などの干しザル、ネットなどに入れて乾燥させます。100円ショップなどでも販売されていますので手軽にチャレンジできます。
鳥や虫に注意しながらしっかり乾燥させたら消毒済みの密閉できる瓶などにいれて保存しましょう。乾燥剤を入れると安心です。ご家庭で作ったものは乾燥が不十分だとカビの心配もあるので早めに使い切るようにしましょう。
できあがったお茶はそのままお湯を注いでも、枸杞の実などとブレンドしてもおいしくいただけます。
みかんの皮とあうブレンド
そのままでも十分美味しくて消化に良く、気を巡らせてくれストレスにもいいみかんの皮のお茶ですが、せっかくなのでいくつかおすすめのブレンドをご紹介します
□ストレスで熱がこもったら「みかんの皮+薄荷・菊花」
現代人が抱えるストレスはさまざま。ストレスがあると気の流れが悪く滞った状態となります。流れが悪いので停滞したり、滞ったものが熱を持つことも。そんなパターンにおすすめのブレンドは橘皮、薄荷、菊花。
橘皮が消化を助け、ストレスのために上に上った熱で頭痛がするときは薄荷が冷やし、スマホやパソコンで疲れた目を菊花が癒してくれます。香りもいいのでおすすめです。
□消化がうまくいかず気も弱っているときは「みかんの皮+なつめ、生姜」
みかんの皮、高麗人参、なつめは昔からよくブレンドされている朝鮮時代の王室のお茶でもあり、「参橘茶」として『朝鮮王朝実録』にも掲載されているそうです。なつめは色も味もよくブレンドしやすいのでおすすめです。気力を上げるのに高麗人参を使いますが入手しにくい場合は橘皮となつめだけでも十分だと思います。
冷えを感じる方にはみかんの皮、乾姜、なつめがおすすめです。薄くスライスした生姜を乾燥させて一緒にブレンドしてみましょう。こちらは消化器系にフォーカスしたブレンドで、消化機能落ちている人でお腹が冷える人によいお茶です。
橘皮と乾姜のブレンドも「姜橘茶」という名前で朝鮮王朝にでてくるお茶だそうです。
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□食べ過ぎをリセットしたいときは「みかんの皮+山査子」
消化機能よりも食べ過ぎてしまったときに良いお茶です。脂っこいものを食べて胃もたれしているときなどには橘皮、山査子、なつめがおすすめです。山査子は酸味が強いのでなつめを味の調整としてブレンドしますが、なつめはなくても大丈夫です。
みかんの皮の入った漢方薬
【陳皮ちんぴ】
ミカン科の果皮を乾燥したもので古いものほど良いとされます。味は辛・苦、性は温で肺・脾に帰経します。
健胃、整腸などの作用があり消化不良などに用いられます。
主に消化不良などに用いられ腹部膨満や腹痛には平胃散(蒼朮、厚朴、陳皮、甘草)、嘔吐や吃逆がひどいときは竹筎、党参を合わせた橘皮竹筎湯などがあります
【枳実きじつ】
ミカン科。酸橙、香円の幼果を乾燥したものをいい味は苦・酸、性は微寒、脾、胃に帰経します。
胃の中に飲食物が停滞して、上腹部が膨満しているときなどに使用する健脾薬として香砂枳朮丸という方剤があります。
以上、ごく一部ですが昔からみかんの皮は主に胃・腸によく消化を助ける目的で使用されてきたようです。健康のためには腹八分目がよいのですが、食べ過ぎてしまったときの対策としてみかんの皮を利用してみるのもいいかもしれませんね。
(参考文献)
毎日使える薬膳&漢方の食材辞典(2023.5.20 ナツメ社)
東医宝鑑アカデミー資料
中医臨床のための方剤学 東洋学術出版社 2018.8.15
漢薬の臨床応用 中山医学院 神戸中医学研究会 医歯薬出版株式会社 2007.5.20