漢方薬店kampo’s薬剤師の鹿島絵里です。現代ならではの目線と評価で、漢方の役立つ情報を発信していきます。
妊活をしていると、つい排卵や基礎体温の方に意識が向きがちですが、経血そのものをまじまじと観察したことはあるでしょうか。経血は体の状態を映す鏡。実は、妊娠力とも深く関わっています。月経の質を丁寧に観察することも、妊娠しやすい体を整えるための大切な手がかりになります。
東洋医学では、血けつは生命エネルギーの源であり、心身をうるおし、子宮を養う大切な存在と考えます。
そのため、経血の色や量、質感の変化は、体の中の「血の状態」や「巡り方」のサイン。
つまり、月経は“今のあなたの体質を映す鏡”なのです。
今回は、妊娠を望む方に知っておいてほしい、経血から読み解く体のサインを4つのタイプ別に解説します。
Contents
① 経血が少ない → 「血虚けっきょ」タイプ
血が不足して、子宮を十分に養えない状態。妊娠に必要な“血の力”が弱いタイプです。
血虚は、体の中の血が不足していることを意味します。
血はホルモンの働きや子宮内膜の厚さにも関係しており、血虚の状態が続くと、内膜が薄く、受精卵が着床しにくいことがあります。

主なサイン
- 経血量が少ない、期間が短い(2〜3日で終わる)
- 色が淡く、水っぽい
- めまい、立ちくらみ、顔色が白い
- 髪や肌が乾燥しやすい
血虚の原因は、食事量の少なさ・過度なダイエット・慢性的な睡眠不足やストレスなど。
体がエネルギー不足になると、新しい血をつくる力も弱まります。
養生のポイント
・栄養バランスを整え、「血を養う」食材を取り入れましょう。
おすすめは、黒ごま・なつめ・レバー・ほうれん草・プルーン・クコの実など。
・冷たいものや生野菜ばかりを避け、温かいスープや煮込み料理で胃腸をいたわるのも大切です。
「血を増やす」ことは、単に鉄分を摂ることだけではありません。
からだ全体を温め、消化吸収を整え、眠っている間に血が巡るようにする――そんな、からだの中で血けつを育む生活を心がけましょう。
② 経血が暗い色・ドロッとしている → 「瘀血おけつ」タイプ
血流が滞り、子宮の環境が冷えて固まっている状態。
「瘀血おけつ」とは、血の巡りが滞って、体の中に古い血がたまってしまう状態のこと。「瘀お」には“とどこおる”“停滞する”という意味があり、つまり瘀血とは、血の流れがスムーズに行かなくなっているサインです。
血の巡りが悪く、古い血が子宮の中に滞ってしまうことで、経血の色が暗く、塊のようにドロッとしたり、生理痛が強く出やすくなります。
主なサイン
- 経血が黒っぽい・暗紫色
- ドロッとして重たい感じ
- 下腹部の痛みが強い、経血に塊が混じる
- 肩こりや頭痛、くすみやすい肌
瘀血タイプでは、子宮や卵巣への血流が悪くなるため、卵の育ちや着床の環境にも影響が出やすくなります。
冷えやストレス、長時間の座り仕事などが悪化要因です。
養生のポイント
・からだを冷やさないことが第一。下腹部を温める服装を心がけましょう。
・温めて巡らせる食材(ショウガ、ネギ、シナモン、黒豆、紅花茶など)を取り入れて。
・ゆるめのストレッチやウォーキングで血流を促すことも有効です。

「冷え」からくる瘀血の場合は、生理の初日~2日目に冷えるような痛みが出やすく、
「熱」からくる瘀血の場合は、経血が鮮紅で粘りが強く、のぼせや口の渇きを伴うこともあります。
同じ“瘀血”でも、冷えか熱かによってケアの方向が少し違う点も、漢方の面白いところです。
③ 大きな塊が混じる → 瘀血の進行サイン
瘀血が進み、冷えや熱が加わって血が固まりやすくなっている状態です。
生理中に“親指ほどの大きな血の塊”が出る場合は、血がスムーズに排出されていないサイン。
漢方的には、瘀血に「冷え」または「熱」が加わった状態と考えます。

冷えが強いタイプ
- 暗紫色で粘りが強い
- 下腹部が冷えて痛む
- 温めると楽になる
→ 子宮が冷えて血が固まっているタイプ。
カイロなどで腰・下腹を温め、温野菜・スープなどで内側からも温めましょう。
熱が強いタイプ
- 鮮紅色で粘度が高く、塊が多い
- 生理中にのぼせ、口の渇き、イライラがある
→ 体内に熱がこもって血が固まっているタイプ。
刺激物やアルコールを控え、ハトムギ・セロリ・ミントティー・緑豆などで熱を冷ますのが◎。温度の冷たいものではなく、涼生の性質をもつ食材を利用するのがポイントです。
いずれの場合も、放っておくと子宮内の環境が硬くなり、妊娠しづらくなることがあります。
月経がつらいほどの塊や痛みが続くときは、早めに婦人科受診や漢方相談をおすすめします。
④ 経血がサラサラ・色が薄い → 「気虚ききょ」タイプ
体のエネルギーが不足して、血を押し出す力が弱い状態です。
「気」は、からだを動かす原動力。
気虚タイプでは、その“押し出す力”が不足して、経血がサラサラと少量ずつしか出ないことがあります。
主なサイン
- 経血が水のように薄く、長くダラダラ続く
- 疲れやすい、息切れしやすい
- 顔色が白っぽく、声に張りがない
- 食後に眠くなる、下痢気味
血虚が「血の材料不足」だとすれば、気虚は「血を押し出す力の不足」。血が“水”だとしたら、気はそれを流す“ポンプ”のようなもの。ポンプが弱れば水は流れず、水が足りなければポンプも空回りします。
どちらも妊娠には大切な要素と言えます。
養生のポイント
・食事は抜かず、規則正しくとりましょう。
・エネルギーを補う食材(もち米、山芋、かぼちゃ、鶏肉、ハトムギ、なつめなど)を意識的に。
・冷たい飲み物を避け、温かいスープや白粥で胃腸をいたわって。
また、無理な仕事や夜更かしが続くと「気」はすぐに消耗します。
まずは“ちゃんと休む勇気”を持つことが、気虚ケアの第一歩です。
まとめ:月経は「からだの声」
生理の色や量は、単なる個人差ではなく、体の内側からのメッセージです。
- 経血が少ない → 血を増やすケア(血虚)
- 暗くドロッと → 巡りをよくするケア(瘀血)
- 大きな塊 → 冷え・熱を整えるケア(重度の瘀血)
- サラサラ薄い → エネルギーを補うケア(気虚)

これらを見極めて整えることで、子宮内の環境が整い、妊娠力もぐっと高まります。
生理は「月に一度の健康チェック」。“いつもと違う”変化に気づけることこそ、からだと丁寧につきあう第一歩です。
あなたの月経が、もっと健やかに、もっと妊娠しやすいリズムへと変わっていきますように。
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