かぜ 〜漢方の教科書〜


\体質を知ってよくしよう/
感冒

春カゼ、梅雨カゼ、夏カゼ、秋カゼ、冬カゼ、とそれぞれの季節に存在するカゼ。
みなさんは、どの季節にカゼをひきやすいですか?

カゼにも体質や種類によって改善方法が異なります。
それぞれの養生方法を学びましょう。


 

一年で最も多い病気「カゼ」

漢方では、自然界の気候変化を“風・寒・暑・湿・燥・火”の6つに分け、植物をはじめとした万物の生長や成熟には欠かせないものとして捉えています。

例えば、風によって種子が運ばれて受粉する植物や、厳しい寒さを乗り越えることで栄養を増す野菜もあります。適度な温度や湿度、太陽の暖かさ、雨の水は動植物の生長には欠かせません。

私たち人間もこうした自然界の気候変化「六気ろっき」の影響を受けて生きています。
しかし、この六気に異常が生じたり、身体の適応力が低下していると、六気は発病因子「邪気じゃき」として身体に侵入し、病気を招く原因「六淫りくいん」となります。

この六淫邪気は、鼻・口・皮膚から侵入することが多く、これを先導するのが「風邪ふうじゃ」のため、一般的に感冒は「カゼ(風邪)」と呼ばれます。

自然界の気候変化「六気ろっき
・発病因子「邪気じゃき
・病気を招く原因「六淫りくいん
 

 

カゼのひきはじめは「葛根湯」とは限らない

カゼのひきはじめに「とりあえず葛根湯を飲む」という方が多いようですが…
そのカゼ、本当に葛根湯でいいのでしょうか?

葛根湯の出番は、六淫邪気の「風邪ふうじゃ」と「寒邪かんじゃ」によるもので、悪寒が見られる場合に用いられます。

もし、「熱邪ねつじゃ」や「燥邪そうじゃ」であればどうでしょう?また別の対処が必要になります。

カゼの対処は、季節や環境、現れている症状によって違うため、まずは邪気を判断し、それに応じた養生を実践しましょう。

 


 

カゼのタイプ別養生

1,ゾクゾクタイプ

【風寒】
風寒邪によって引き起こされる

チェック

□ゾクゾク寒気がする
□悪寒と一緒に発熱や節々の痛みがある
□汗をかいていない
□くしゃみ、透明の鼻水が出る
□温かいものを欲する

ポイント

風寒邪によって引き起こされるタイプで、寒気がするのが特徴です。冬や冷房で冷えた時にひきやすいカゼ。
冷やすのは厳禁。身体を温めて発汗させ、風寒邪を追い払いましょう。

養生

・首巻きやパーカーなどで首から背中の上部にかけてしっかり温めましょう
・黒糖入り葛湯を飲んで背中のこわばりをやわらげましょう

おすすめ食養生

ねぎ、生姜、シナモンなどの辛味をとって、身体を温め発汗させましょう

 

2,ヒリヒリタイプ

【風熱】
風熱邪によって引き起こされる
チェック

□のどの痛みや腫れがある
□発熱、高熱が出る(悪寒はない)
□黄色、または粘りのある鼻水や痰が出る
□鼻詰まり、のどの渇きがある
□おでこやのどを冷やすと気持ちが良い


ポイント

風熱邪によって引き起こされるタイプで、「のどから来る」ことが多いのが特徴。夏や空気の悪いところでひきやすいカゼ。うがい手洗い、部屋の換気はこまめにしましょう。


養生

うがい薬が無い場合は、緑茶うがいがおすすめ
唐辛子やスパイスなど刺激物は避けましょう


おすすめ食養生

ミントティー、菊花茶、板藍根など清熱解毒できる素材をお茶にして飲みましょう

 

3,ギュルギュルタイプ

【風湿】
風湿邪によって引き起こされる
チェック

□身体や頭が重い
□胃のムカつき、痛み、吐き気がある
□腹痛、下痢がある
□食欲がない
□むくみがある

ポイント

風湿邪によって引き起こされるタイプで、いわゆる「お腹のカゼ」が特徴。雨天や梅雨など湿気の多い時にひきやすいカゼ。胃腸に負担をかけないように消化の良いものを摂るようにしましょう。

養生

生もの、油っこいもの、乳製品は避けましょう
お腹が空かない時は食べず、胃腸を休めることも大切

おすすめ食養生

おかゆなど、消化の良いものを摂りましょう
シソ、みょうが、生姜、大根で消化を助けましょう

 

4,カラカラタイプ

【風燥】
風燥邪や体力消耗によって引き起こされる
チェック

□空咳が出る
□痰は出ない、または少なく、吐き出しにくい
□のどが渇く
□夜間に咳が悪化しやすい
□ほてり、または微熱がある

ポイント

風燥邪や体力消耗によって引き起こされるタイプ。潤い不足で乾燥しているのが特徴。お年寄りや長引くカゼに多く見られます。マスクや加湿器で保湿を心がけましょう。

養生

アロマディフューザーや濡らしたタオルを室内に干して、湿度を上げておくこともおすすめです

おすすめ食養生

・杏仁豆腐や梨、かりん蜂蜜、ゆず茶、びわ茶で空咳を鎮めましょう
・白キクラゲや百合根、松の実などの白色食材で肺を潤しましょう

 

 


まとめ

ひいてしまったカゼを早く治すことは必要ですが、「カゼをひかない身体作り」はもっと大切。身体の外壁(衛気)を強くして、外から侵入しようとする風邪をはね除けることが出来ればカゼをひきません。

そのためには、まず生活面で以下のことを心がけましょう。

・夜は早く寝る(良い睡眠は免疫力アップに不可欠)
・ストレスをためない(発散させる、悩まない)
・食事は食べ過ぎない(腹八分以下にして腸の活動をサポート)

とっても基本的なことですが、これさえ難しいのが現代人。生活を整えることは薬を飲むことよりも大切です。
いざという時のために、それぞれのタイプに合った漢方薬を常備しておくのも良いでしょう。

漢方の先生

小林香里

国際中医師・国際中医薬膳師・医薬品登録販売者
20代に過労とストレスで身体をこわしたことを契機に、北京中医薬大学日本校にて中医学と薬膳を学び始める。
薬日本堂(株)にて漢方相談、社員教育、スクール講師等、約13年を経て、2017年に独立。
夫婦で漢方薬店と鍼灸院を併設する漢方鍼灸「和氣香風かきこうふう」を東京自由が丘にオープン。
漢方相談をメインに、セミナー講師としても活動している。
著書:「温めもデトックスも いつもの飲み物にちょい足しするだけ!薬膳ドリンク」(薬日本堂監修/河出書房新社)
監修:「あなたにぴったりの漢方薬絵ずかん」(株式会社学研プラス)

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2000年以上前の古代中国で生まれた中医学。 それが日本に伝わり、
独自の発展を遂げた日本漢方、韓国においては韓方。
それぞれの国で伝統医学が存在しています。 歴史が長い分、
多くの理論や考え方が派生しています。

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