漢方薬にも副作用はある
パーソナル漢方相談と調剤薬局勤務の二刀流薬剤師、富岡みほです。
漢方を出すときの注意点は、パーソナル漢方相談と調剤薬局では少し違います。パーソナル漢方相談ではコミュニケーションから一人一人の「証」を理解し、「証」にあった漢方薬をお選びすること。漢方薬も1〜2種類の漢方薬で体質改善を目的に選ぶことが一般的です。
一方、調剤薬局においては他科受診から3種類、多いと5種類の漢方薬を服用中なんてこともあります。また鑑査にスピードも必要です。
より適切な服用のため、どちらにおいても副作用の理解は必要な知識ですね。
漢方薬処方、調剤薬局の薬剤師の役割
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漢方薬処方、調剤薬局の薬剤師の役割
調剤薬局での薬剤師は、医師の処方がお悩みにあった適切な処方か、また副作用を引き起こす重複漢方がないかを鑑査し、副作用の初期を見逃さないこと。また重複処方の際は、今はどの処方を優先すべきかアドバイスすることも調剤薬剤師の仕事です。
漢方薬は効能効果が色々とあり理解できない。何を鑑査すべきなのか分からない。西洋薬に比べ副作用も少ないイメージだから心配ないと思いがち。
他科受診からたくさんの漢方薬を服用されていても適正に鑑査できてないことが多いのではないでしょうか。漢方薬にも注意すべき副作用があります!不安なく鑑査できるよう、薬剤師の方に向けて、鑑剤薬局での漢方処方鑑査についてをまとめてみました。
鑑査で注意することはいくつかありますが、その1注意すべき生薬から覚えましょう!
鑑査時注意すべき生薬
甘草 グリチルリチン
甘草は漢方薬の約7割に含まれる生薬ですが、漢方薬だけでなく飴、味噌など食品や市販薬にも多く含まれています。
グリチルリチンはカリウム排泄を促進するため、低カリウム血症を起こすことがあります。また一般的には多量に摂取すると偽アルドステロン症を起こすことがあります。
ただし、偽アルドステロン症は必ず量に比例してでる訳ではなく、個人差があり、副作用が現れやすい方もいます。初期症状を見逃さないよう注意しましょう!
麻黄 エフェドリン
エフェドリンは交感神経興奮作用をもつため、交感神経興奮作用をもつ薬との併用には 注意が必要です。また、心疾患、高血圧、甲状腺疾患、前立腺肥大、高齢者には注意が必要です。
漢方薬は身体にやさしいとイメージされる方も多いでしょうが、エフェドリンはドーピング禁止薬でもあります。またエフェドリンはOTCの総合感冒薬によく含まれています。過量からの副作用に注意しましょう。
大黄 センノシド
センノシドは過量投与で下痢、腹痛が出ることがあります。
大黄は瀉下作用だけではありません。清熱や解毒、また瘀血をとる作用もあり打撲や産後腹痛や生理痛をとるために含む漢方薬もあります。しかし下痢、腹痛があっては服用は中止すべきです。
また大黄は妊娠中、授乳中には禁忌です。
地黄 カタルポール
地黄は婦人病には欠かせない生薬。血(陰)を補うことに優れた生薬です。また生命力を養う生薬でもあり年齢と共に不足する血も補える生薬。ただ、粘性があるため胃に停滞し胃もたれを起こすことがあります。
地黄は婦人病のベース処方の四物湯に含まれるため、多くの処方に含まれます。
初めて処方の際は胃腸病の歴を確認、継続服用中には胃の負担はないかの確認が必要です。胃の状態によっては、食後服用で胃の負担を軽減できることもあります。
附子 アコニチン
附子は冷えや冷えからの痛みを改善します。身体を芯から温める力を回復することに優れた生薬。ただ毒性もある生薬で過量投与で中毒症状が出やすい生薬でもあります。
特に小児では中毒が起こりやすく原則として使用しないこと。また暑がり、のぼせがあり、口が渇くなど熱性傾向は副作用が起こりやすいため注意です。
人参 サポニン
人参は元気を補う生薬の代表。虚証の人には必要不可欠な生薬です。市販のドリンク剤にも滋養強壮として含まれています。稀ですが、長期的に服用で血圧上昇すること、のぼせ、蕁麻疹、皮膚炎の悪化がみられることもあります。熱性傾向、体力があり体格ガッチリなタイプには副作用が起こりやすいとも言われています。
六君子湯 加味帰脾湯 補中益気湯
黄芩 バイカリン
黄芩は苦味が強い性質で炎症性の熱を取り除く生薬。また安胎作用もあるため妊娠中にも使われることもあります。ただ、ごく稀に柴胡と黄芩は間質性肺炎、肝機能障害を起こす可能性があるとされています。風邪のような症状が出てないか、倦怠感、かゆみ、吐き気に注意が必要です。
半夏瀉心湯 柴苓湯 黄連解毒湯
山梔子 ゲニポシド
山梔子はイライラや眠れないなど熱ごもりを取り除く生薬。婦人科でよく処方される加味逍遙散に含まれる生薬。山梔子は胃腸虚弱で軟便傾向の方には注意の生薬です。
また、サンシシ含有製剤は5 年以上服用すると、腸間膜静脈硬化症があらわれるおそれがあり、長期投与する場合にあっては、定期的に CT、大腸内視鏡等の検査を行うことが望ましいとされています。継続服用時はお通じの確認が必要ですね。
山梔子を含む生薬の服用期間 脾虚の有無(普段から下痢しやすいなどないか)
加味逍遙散 黄連解毒湯 加味帰脾湯
調剤漢方鑑査のポイントとしては、ステップ1としてまずは8つの副作用の出やすい生薬と使用上の注意を理解しましょう。
市販薬にも多く含まれる生薬もあります。疲れが気になるからと続けていた市販薬が処方薬と生薬が重複して血圧変化に影響、皮膚疾患の悪化に繋がっていたなんてこともあります。
起こり得る副作用をしっかり理解して調剤鑑査に役立てていただきたいです。
次回は、漢方のベース処方を覚えて、鑑査を楽に!