你好(ネイホウ)!! はじめまして。
香港在住の薬剤師・国際中医師の林 三貴と申します。
香港在住10年、ちょっぴり香港テイストな東洋医学・養生関連情報をお届けできればと思います。
世界一の長寿都市 香港🇭🇰
日本から飛行機で約4時間の香港。
エネルギッシュで、食べ物が美味しい大都会。こんなイメージをお持ちかと思います。
そんな香港ですが、世界一の長寿都市だってことをご存知でしたか?
それも、2019年には5年連続平均寿命世界一を達成しているのです!!意外と感じる方も多いかと思います。
10年ほど前までは、日本が世界一の長寿国であったのは周知の事でしょう。
ヘルシーな和食中心の食生活、医療水準の高さ、衛生環境など長寿国に相応しい条件が揃っていました。
香港といえば、経済力は高いけれど、狭い街で人口密度世界一、建物も密集し、日本ほど衛生的であるとは言えません。
医療水準は高いとはいえ、医療費は全て自己負担なので、貧富の差の激しい香港では、均一な医療は受けられません。
それなのに、なぜ香港は世界一の長寿都市なのか?
理由や背景を紐解いていきたいと思います。
香港の食生活
「医食同源」が無意識のうちに染み付いている。これが私の香港人のイメージです。
《医食同源いしょくどうげん》
日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方
この考え方が生活の隅々にまで浸透しています。
特に「冷えは万病のもと」という意識でしょうか。
高温多湿な気候ではあるのですが、冷たいものは避け、体を温めることを基本とし、その上で消化がよく栄養補給しやすいものを食べるという食習慣があります。
それゆえに
・起床後の胃腸の働きが充分でない朝にはお粥を
・食事の前には、様々な食材が入った温かいスープを
飲むことが多いです。
スープは、その日の気候や体調に合った素材を選び、数時間煮込んで作られたもので「薬膳スープ」と考えていただいても良いかと思います。
ただ香港人には「薬膳」という意識はなく、街角で「薬膳スープ」という文字を目にすることもありません。当たり前の如くスープを食する習慣なのです。
香港に来て間もない頃、薬草や乾物を豊富に取り扱う店を訪れた際に、若者がたくさんいて「場所を間違えた?」と我が目を疑ったことがありましたが、これが香港の日常なんですよね。
香港のドリンク習慣
水筒に温かいお茶や白湯を入れて持ち歩く習慣もあります。
スープ同様、中に薬草などを入れている人も多いので、スーパーでは茶漉し付きの水筒も売られています。
飲食店で出てくる飲み物は熱いお茶か白湯で、氷が入った水には無縁です。
亜熱帯の都市、香港で人々が”暑気払い”するために利用するのが「涼茶スタンド」です。
こちらは、冷たいドリンクを売るスタンドではなく、十数種類の薬草を煎じた温かいお茶を何種類か提供しています。
どれもとても苦くて美味しいと言い難いのですが、香港の方は平然と飲んでますよ。
このように香港の人は、温かい飲食物を毎日取り、健康を維持しています。
余談になりますが…
日本人に人気の香港デザート「亀ゼリー」
これは亀の腹甲と土茯苓や仙草など数種類の薬草を一緒に煮出し、固めたものなのですが
これも清熱解毒効果を狙ったデザートです。
昔の王様のニキビ治療用として作られたと言われていますが、現在はアンチエイジング対策、デトックス対策で食されることが多いと思います。
香港の運動の習慣と意識
朝起きて、カーテンを開けると必ず数名の方が、公園や広場で太極拳、体操、ウォーキングなどをされているのをお見かけします。
ほとんどがシニアの方で、高齢の方も体を動かす習慣がしっかりと身についているようです。
温暖な気候であるのと、狭いマンション暮らしのため、外出するのに億劫ではない環境も後押ししているのでしょう。
そして、一旦外に出れば、坂道だらけな街並み。歩くだけでもかなり良い運動で、知らず知らずのうちに健脚になり心肺も鍛えられるというわけです。
家族間コミュニケーション
世界一家賃の高い香港。そんな住宅環境のため、子どもや孫と同居している高齢者が多く、普段から家族間の物理的な距離間が近いのが現状です。
加えて、家族や親戚、とりわけ年配者を大事にする香港人マインドがあります。
お祝いの日はもちろん、週末になれば家族で集まり、食事を楽しむ習慣は残っています。
日本のように高齢者が、寂しくひとりで食事をするという光景は少なく、常にコミュニケーションをとることができる環境があります。
元々、香港の人々はあまり思ったことを内(中)に溜め込んだりせず、また積極的に行動する気質なので、ストレス回避能力には長けているのですが、コミュニケーションを取れる相手が身近な環境があり、孤独を感じる高齢者が少ない。
これが長寿都市たる所以でしょう。
目指すは健康長寿!
東洋医学の健康観に「体と心、両者のバランスがとれて健康」という考えがありますが、まさにそれを地で行く香港のご老人達。
医食同源の習慣、適度な運動そしてコミュニケーション。
香港は長寿都市となる条件が整っており、世界一には、なるべくしてなったという感じもあります。
2036年には65歳以上の方が、人口の31.1%を占めると言われる香港。
高齢化が加速し続けていますが、市民の意識が変わらない限り、政府のバックアップ体制と相まって、長寿都市であり続ける可能性は大でしょう。
同じく高齢化社会の日本、平均寿命が高くても寝たきりであれば意味はありません。目指すは”健康長寿”です!
香港から学ぶことはたくさんあると思います。