元日の朝に家族でいただくお屠蘇(とそ)ですが、召し上がったことはありますか?お屠蘇とは数種類の生薬からなる屠蘇散(とそさん)を漬け込んだお酒のことを言います。無病息災と長寿を願う縁起物のお酒です。
お屠蘇の始まりは?
「屠蘇」とは「蘇という名の鬼をやっつける(屠るほふる)」または「邪気を屠って魂を蘇らせる」などの意味があると伝わっており、文献をたどるとその始まりは中国の古い時代、後漢時代と推測されます。
当時は大黄や烏頭など作用の激しい生薬も組み合わされており、いかにも「悪い鬼を成敗してやる」と言わんばかりですが、こんにちドラッグストアなどで手に入る屠蘇散はそうした生薬を抜き去り、より飲みやすいようにブレンドされています。
現代のお屠蘇
飲みやすい現代のお屠蘇ですが、作りやすい工夫もされています。
麦茶のティーバッグを想像していただくと分かりやすいです。ブレンドされた生薬がティーバッグの中に入っていて、そのままお酒や本みりんに漬けて作ります。
生薬量も一般的な煎じ漢方薬の1/10程度で、かつての文献にあったお薬というよりは手軽なお茶に近い印象です。
ブレンドされている生薬は製造元によってまちまちですが、桂皮(シナモン)、陳皮(みかんの皮)、白朮、防風、桔梗、丁字(クローブ)などが多いようです。
胃腸を労わりながら風邪予防にいいブレンドになっています。
12月になると薬局、薬店、酒屋さんなどでお得意様に配ったり、また一般向けに販売しているところもあります。
お屠蘇の作り方
・屠蘇散のティーバッグを 清酒(または本みりん)に浸す
・一晩おく
・翌朝ティーバッグを取り出す
正式には大晦日の晩に清酒や本みりん(料理用ではなく本みりんを使います)、またはそれらを混ぜ合わせたものに屠蘇散(刻み生薬のブレンド)を一晩漬け込みます。
清酒、本みりんの分量は、ひと家族がいただくのにトータル100ccほどで十分だと思いますが、添付の説明書きを参考に調整してください。
清酒が多ければキリリとしたお屠蘇に、みりんが多ければ甘口のお屠蘇に仕上がります。
翌、元日の朝に生薬を取り除きます。
ティーバッグでなければ、茶漉しなどを使って除いてください。
お屠蘇の飲み方
正式には屠蘇器と呼ばれる道具を使いますが、もちろんご家庭にあるもので代用できます。
ティーポットや急須に出来上がったお屠蘇を用意して盃やお猪口でいただくのでも、十分にそれらしい雰囲気が出ます。
飲む順は年少者から。年長者に盃へお屠蘇をそそいでもらい、いただきます。次は飲んだ人が次の人の盃へお屠蘇を注ぎます。あふれる若いエネルギーを年長者へと順々に伝えていきます。厄年の方がいらっしゃれば、その方が最後にいただきましょう。
もちろん、盃は銘々のものを使って大丈夫です。
しきたりに則るのもイベントらしくておもしろいものですが、体や家族を想うことが一番の目的ですので、臨機応変に楽しみましょう。
お屠蘇のアレンジいろいろ
さて、お茶のティーバッグのような見た目のお屠蘇ですが、清酒や本みりんで漬け込みますから、アルコールに弱い方や未成年者はNGです!
家族でいただくものといっても、中にはもちろんアルコールの飲めない方もいらっしゃるでしょう。その場合は盃に口をつけるだけの真似事で十分です。いかにも薬酒然とした風味が苦手という方は、雰囲気をみんなで共有したり、また思い切ったアレンジで楽しむという手もあります。
屠蘇散でホットワインを作ったり、紅茶をベースにしたスパイスティーにしたり。ノンアルコールなら飲んでみたいという方も多いかもしれませんね。屠蘇散をミルクティーのスパイスにするなら、牛乳のほか、豆乳やアーモンドミルクを使ってみるのも楽しそうです。
生薬の独特の香りを自分や家族に合ったやり方で味わってください。
お屠蘇はツケを回収する口実?!
余談ですが、江戸の庶民にお屠蘇が広がったのは、ツケの治療費を回収するのがきっかけだったというエピソードがあります。医者が手ぶらだと門戸を叩きにくいので「健康を願う縁起物のお屠蘇」を配りながら患者から一年分のお代をいただいたそうです。
お金を取り立てるのも取り立てられるのもあまりいい気分がしませんが、縁起物のお屠蘇で気持ちを和ませて、というのはいかにも江戸らしい心持ちです。今年のツケは今年のうちに!
健康をより意識するようになった今の時代です。お屠蘇で無病息災と長寿をお祈りして、新年をスタートしましょう。
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