1月7日は七草がゆを食べる習慣があります。お正月の疲れた胃を休めてくれる七草がゆ。中国の人日(じんじつ)の節句の風習が日本に伝わって、今の形になったと言われています。一年の無病息災を願いながら、お正月の祝宴で使いすぎた胃を休めるために、7種の草(野菜)を入れて炊いたおかゆをいただきます。
春の七草と秋の七草との違いは?
1月7日に七草がゆとしていただく春の七草ですが、他に秋の七草があるのはご存知でしょうか。春の七草が食用なのに対して、秋の七草は観賞用です。ピンクや紫などのあざやかな色彩で楽しませてくれる秋の七草は花が主役ですが、七草がゆに用いる春の七草は全草が主役です。
旧暦の1月7日は、現代の暦でいえば1月末~3月上旬。当然きれいな花の季節ではありません。そんな季節の春の七草は、大地からいただく生命力を象徴していると言えそうです。
七草の栄養
せり、かぶ、だいこんはスーパーで簡単に手に入る馴染みの野菜です。しかし七草がゆの習慣が生まれた当時は栽培も流通も現代のようにはいきません。
七草を摘みながら健康を祈願し、また実際に、七草に体調を整える性質があることをかつての人たちは知っていたのでしょう。冬に青い野菜が簡単に手に入らなかった時代の貴重なビタミン源だったと想像できます。お正月にごちそうをいただいて胃が疲れたと感じられる現代とは、また違った意味合いで親しまれていたのかもしれませんね。
七草がゆはどんなふうにからだにいい?
個々の七草にはそれぞれ、リウマチにいい、肝臓にいい、目にいい、痔の薬になる、などなど、色々な効果が言われていますが、刻んでおかゆとしていただく量で、薬のような効き目を期待することは難しいです。大根には消化を助ける酵素が豊富ですが、これも熱を加えると失活してしまいます。
では七草がゆは気休めで全然意味がないかと言われれば、そんなことはありません。食べて実感するのがもっとも手っ取り早いですが、漢方の視点をまじえて解説してみます。
葉っぱも根っこも大事
漢方の視点で七草がゆを見てみると、まず全草を用いるものが多いところがポイントです。七「草」と言えば地上の青い、いわゆる「草」の部分を想像してしまいがちですが、この青い部分はもちろん、地下の根っこまで全ていただくものが多いです。葉、茎、根、皮、それぞれに役割があり、それぞれが違う栄養を蓄えています。これをまるごといただくことを「一物全体(いちぶつぜんたい)」といい、漢方で大事にされる考え方です。
また、土地のものをいただくことが、そこに住む人の体を良くすることも昔から伝えられていて「身土不二(しんどふじ)」と表現されます。その季節にその土地のものを食べる。
これが体を自然に調和させて健康に生きる方法だというのは本能的にうなずけるところです。
おかゆとしていただくこと
「白飯に漬物が好き!」その意見に大賛成です。が、あえての七草がゆにはやはり意味があります。生ものや冷たいもの、お酒、味の濃いものや油の多いものを食べすぎると、胃腸は酷使されてうまく働けなくなってしまいます。
温かいおかゆはそれ自体が消化に良く、また胃腸を温めて元気にしてくれる作用があります。
病後の人がおかゆを食べて元気を取り戻すように、お正月のごちそうのあとにも同様のケアをして酷使した胃腸を回復させておくのが未病を治すことになります。
ちなみに、辛いものや油もので胃腸に熱がこもっている場合は温かいおかゆを受け付けないこともあります。そんな時は大根おろしがおすすめです。加熱しない大根は消化を助けて熱をさます手伝いをしてくれますので、おかゆとして炊かずにトッピングもいいですよ。
体に合った食べ方で七草がゆを楽しんでください。