理学療法士&ピラティス指導者の長尾知香です。
今年は春の嵐が多かったためか、気温の乱高下が激しく、自律神経の乱れから、めまい、頭痛、首こり肩こり等で悩まされる方も多かった印象です。私も同じような悩みの時に、首の筋肉のストレッチや肩甲骨を動かすケアをして、もちろん効果的な時もありましたが、アゴのケアを実践してみたら、簡単な上に全てがスッキリし、しかも効果が長持ちするのにビックリ。おまけに、実践してみて、遅ればせながら、自分の顔やアゴの歪みを実感しました。
今回は、運動の連鎖として頭から耳、首、肩はもちろん、全身のバランスまで変えてしまうこのアゴ(=顎関節)を自分で整えるコツを1つだけお伝えします。
ただし、アゴが痛かったり、顎関節症と診断されている方は対象外となります。また、アゴに不調がなかった方も、取り組んでいただくと痛みや違和感が出るようでしたら、運動を中止し、医療機関等の受診をご検討ください。医科学的な効果性については検証中の分野なので、治療体操としてではなく、あくまで、自己責任での健康体操として取り組んでみてください!(^^)!
Contents
人間の左右バランスは顎関節と仙腸関節で決まる
4つ足から2本足で立って歩くようになった人間は、体重を足でしか支えていないにも関わらず、身長が高いので、とっても不安定。足と腰で体重を支えるので、上半身・頭・腕はお荷物です。そのお荷物がグラグラ不安定だと、支える方の足腰に負担がかかりますから、どちらもバランスをとりたいですね。
そこで、下の部分は仙腸関節、上の部分は顎関節でバランスを取っています。仙腸関節は骨盤と背骨を結ぶ部分に位置し、身体全体の重心に一番近い関節です。顎関節は、上半身というお荷物の中でも一番上に位置し、大事な司令塔である頭に一番近い関節です。とても理にかなった戦略ですね。
そのため、この2つの関節にズレが生じると、全身のバランスが不安定になってしまい、筋肉の使い方もアンバランスになり、腰痛や肩こり、首こり、果ては頭痛や背骨の近くに中継点のある自律神経もアンバランスになってしまいます。
頭・アゴ・首&背骨・鎖骨・肩甲骨は連帯責任
頭の骨とつながった上アゴの骨である上顎骨、下アゴの骨である下顎骨が作る関節が顎関節です。耳の穴の約1センチ前に位置しています。主に4つの筋肉によって、口を開け閉めしたり、下アゴを突き出したり(いわゆる「あいーん」と受け口にする)、引き込んだり、左右にずらすことができます。
顎関節のすぐ奥には、頭を支える首の一番上の骨が陣取りますし、喉、鎖骨、肋骨の真ん中の胸骨(きょうこつ)、肩甲骨へも筋肉が折り重なってついています。そのため、顎関節のアンバランスは、これらの筋肉の働きにも影響しますから、舌の動き、呼吸、飲み込み、発声、目の動き、もちろん姿勢のコントロールにも影響を及ぼします。頭や耳に近いため、脳神経もすぐ横を走っていますから、関節周囲の動きの信号が、これらに相互に影響を及ぼすとも考えられています。
とっても複雑で、大事な部分なのですね。
まず現状把握で自分の顎関節と周辺の左右差をチェック
さあ、いよいよセルフ・ケア方法と行きたいところですが、まず己を知る、です。ご自身の顎関節や周辺の左右のズレがあるのか、どの程度なのかをセルフ・チェックしましょう。今回は、左右のズレのみをチェック&ケアしていきます。
●顔面の左右差チェック
☑耳の穴の高さ
☑目と鼻の間の幅
☑目の中の黒目の高さ
☑鼻の穴の高さ
☑口角の高さ
●上アゴと下アゴの位置チェック(=顎関節の中心位のチェック)
①上の歯と下の歯が垂直になるように合わせる。正常な噛み合わせの場合、下の歯が奥まっているので、少し下のアゴを前に突き出す(いわゆる受け口)にすると、上の歯と同じ平面に合わせられる。
②①の状態をキープしたまま、上唇と下唇を軽く指でめくって、唇と歯肉を結ぶ真ん中のスジ(上唇小体/下唇小体)の上下が、どの程度ずれているかチェックする。上唇小体に対して、下唇小体が右か左にずれているかを見ることで、下のアゴが頭の骨&上のアゴに対してどちらへずれているかチェックできます。このズレがない状態、つまり上唇小体と下唇小体が垂直な位置にあることを、「顎関節の中心位」と言います。
すき間時間にできる!下アゴをずらすだけ!
①顎関節を中心位にする(前述の左右差チェック方法をご参照ください)。通常は、上唇小体と下唇小体は、前歯の真ん中に位置しますので、もし真ん中に一致していたら、次回からは前歯の真ん中を合わせるだけでよいです。ズレている場合は、都度、唇をめくって確認してください。
②この中心位を、しばらくただキープするだけでも、バランスよい状態を保つエクササイズとして有効です。
③顎関節および周囲の筋肉の左右バランスを更に整えたい場合
中心位から、均等な幅で下のアゴを左右にずらします。この時、下のアゴが奥まることなく、上の歯と下の歯が垂直なままで行ってください。
右、左、と均等な幅で可能な範囲まで交互にずらし、10回ずつくらいで一旦休憩、3セットくらい行うとよいでしょう。
時間が経つと、元の筋バランスに戻ってしまいますが、時折エクササイズしたり、ただ中心位をキープしたり、少量を頻回に行うと、より効果が出やすいでしょう。
20代で帯状疱疹になった後、疲れると疱疹が出た側の頚~頭が重くなったり痛くなるのにずっとお付き合いしていましたが、このケアをしたら、短期間で頚の筋肉の硬さが改善され、1年程した頃には、ほぼ症状がなくなっていました。おまけに、以前から気になっていた顔の歪みがだいぶ改善され、ほうれい線の左右差も少なくなって、美顔にも良さそうだな、と続けています。
お恥ずかしながら、顔の下半分だけ、開始前(左)と約1年後(右)の写真をご参考までに掲載します。
冒頭でもお伝えしましたが、あくまで健康法の1つとして、ご自身のお身体の反応を見ながら取り組んでみて下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。