治療にも予防にも! 現代人が知っておきたい腸のこと

治療にも予防にも!
現代人が知っておきたい腸のこと

漢方薬店kampo’s薬剤師の鹿島絵里です。現代医学と東洋医学の知見に基づきながら、今を生きる人のための情報を発信していきます。

最後に頼れるのは自分の力

私たちは最近、COVID-19という人類が初めて経験する伝染性の疾患に翻弄されました。感染力が強くて症状が重くなると命にかかわることもあり、また当初はこれといった治療薬もありませんでした。医療や健康について考えた末に、自身の免疫力や回復力を省みて「腸活」にたどり着いた方は多かったようです。

これからの未来でもまた、治療法や予防法の確立されていない、人類が未経験の疾患が流行する可能性もあります。最後に頼れるのは自身の持つ力となれば、その力は高めておきたいものです。いまさらではありますが、多くの人がその答えを腸に求めたのはどうしてでしょう。

腸内細菌ありきのヒト

腸内細菌がヒトの健康になくてはならないことを証明する事例は枚挙にいとまのないほどですが、多くの方に関係しそうな具体的な例を少し挙げてみましょう。

抗生剤と聞くと、どんなイメージがありますか。抗生剤は細菌に侵された体を治療してくれる薬です。一方で、健康に不可欠な腸内細菌たちまで殺してしまうものでもあります。幼少期に抗生剤を多量に使用することで腸内細菌たちの数やバランスが失われてしまうと、その後の発達に影響が出ます。認知機能や言語理解、多動性、情緒安定性に悪影響を及ぼすことは、ヒトが生まれた後の神経系の発達に腸内細菌を介入させている可能性を強く示唆するものです。また、小児アレルギーの発症にも抗生剤の使用歴と関連が見つかっています。もちろん、抗生剤は必要な場面では使わなければなりません。ですが、ちょっと鼻水を垂らしたくらいですぐに使う薬でないことは知っておくべきです。これは成長期を過ぎた大人にも言えることです。

また、運動障害で知られるパーキンソン病は、発症に先立って便秘をする人が多いことが観察されていました。まだ全貌が明らかにされたわけではありませんが、今日、腸内細菌が作り出すあるタンパク質の構造が、腸の迷走神経を通じて脳に伝えられることでパーキンソン症状を誘発することが見出されています。運動機能と腸内細菌、そうだと言われなければなかなか気づけない関係ですよね。筋萎縮性側索硬化症という運動神経疾患でも、病気の進行速度に影響を与える腸内細菌とその代謝物が存在することなどが見出されています。

これらのことは、「腸内細菌の状態は神経疾患の引き金になり得るが、その裏返しで、予防や治療にも腸内細菌が関与できる可能性がある」ことを示しています。実際には神経系だけでなく、免疫、代謝も腸内細菌によって大いに影響を受ける生理現象です。つまり腸内環境を整えることはそのまま、神経、免疫、代謝のトラブルを緩和・解決することに繋がります。治すだけでなく、強くなることもそうです。まだ経験したことのない未知の疾病に対応する力も、腸活によって養える可能性が高いのです。

その土地、文化との親和性

ヒトとして自分の身体を健全に維持するのに他の生き物を必要とする、これがヒトのとった生物的な戦略です。持って生まれた遺伝情報は変えることはできませんが、腸内細菌は変えることができます。このために腸内細菌は「外付けの臓器」などという言い方もされます。
繰り返しになりますが、腸は単に食物の消化吸収を担うだけの器官ではありません。ヒトの遺伝子には書き込まれていないスペックを獲得するために必要な器官としても機能しています。神経、免疫、代謝といった複雑な生体反応に、腸内細菌を使っているのです。

土地によって、気候によって、植物も動物も特色があります。環境にマッチするスペックを持った生き物が有利なのは当然です。ヒトも一動物としてこの原則に従っていますが、文明を持つことで地球上をあちこち移動したり、異文化を取り入れたりしています。とても素敵なことですが、その文化がその土地で育ったのには、しかるべき背景があることを覚えておかなければなりません。目に見えることもなければ普段意識することもほとんどない腸内細菌ですが、やはりこれも土着のもののようです。水や食べ物、宿主に対しても相性があるのでしょう。

健康にいい、ダイエットにいい、病気にいいとされる世界各地の食事が、必ずしも奏功しないことがあります。ときには却って体調を崩す結果になることも。一発逆転を狙ったトリッキーな方法よりも、その土地で先人たちが長い時間をかけて有効性を証明してきた方法には、根本的なところへアプローチする方法やはり説得力があります。本来持っている力を存分に発揮するには、健康とはそもそもどういうことなのかきちんと向き合い、短期的な損得勘定ではなく自分に合った方法を採用しなければなりませんね。

自分の健康を自分で守る意識

科学がどんどん進歩している一方で、すべての謎が解き明かされるのを待っていられるほど一個人の寿命は長くはありません。先ほどの話題に出てきたパーキンソン病の最初の症例報告は1817年です。そこからいよいよ「腸ってすごい!!」と一般人の私たちが認識し始めるまでには2世紀くらいの時間差があります。パズルのピースは見つかり始めているのに、それが組み立てられて全体像が見えてくるまで、重要性には気づけないものです。もちろん腸内細菌がすべてを解決するわけではありませんが、これによって救われる方がいるのもまた事実でしょう。
治療や予防、毎日の健康に腸が大事とわかった今の時代。このタイミングで生まれたことに感謝です。

さて、限られた時間の中で自分の健康をどうやって築き守るのか。食事、運動、睡眠と謳われていますが、実はこれらもみんな腸内細菌との関係がみつかっています。詳しくはまた別の稿で触れられればと思いますが、結局は特効薬や他人に任せっぱなしではなく、自分自身で意識することが大切なように思います。

便利さ、コスト、パフォーマンス、日々の選択の場面ではいろいろなポイントがあります。年齢を重ねたことで、あるいは大病がきっかけで、やっと意識し始めたという方もいらっしゃるかもしれません。いざというときそして日常的にも、心や判断など肉体以外の部分も含めて頼りになる自分の体を、腸からしっかりと養い育てていきましょう。

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