你好(ネイホウ)!! 香港在住の薬剤師・国際中医師の林 三貴と申します。
日本では、ここ数年で耳馴染みとなった「風水」という言葉ですが「風水は運気が上がるおまじない」くらいの認識の方が多いかと思います。
一方、東洋医学同様、香港人の生活に浸透している香港の風水。香港は風水の最先端都市とも言えるでしょう。
今回は香港の現状を交えながら、風水ってどんなものなのかを簡単にお話していきたいと思います。
風水とは
風水は、元々は道教の「風水地理」と言われているものでした。仙人を目指す人への「運が良くなるマニュアル」、つまり仙人になるためにはどの場所で修業をすればいいかを判断するものでした。
その後「安全に生きていくために、どのように自然と調和するのか?」を経験と環境から割り出す役割へと形を変えていき、環境学、地理、生活の知恵が集結されたものが風水のベースとなって人々の生活に根付いていきました。
時代が進み、安全な生活が確保され、風水で判断する必要がなくなっていくと、大自然のエネルギーを取り入れやすい環境を作れば、運気がアップできるという「環境学」に重点が置かれはじめ、今の風水は「環境学」としての考え方が根強くなっています。
大自然のエネルギーを取り込む方法は、土台として「陰陽五行論」を用います。私達の健康を読み解くのが東洋医学で、環境の健康を読み解くのが風水とも言えますね。
東洋(中国)思想は、古代中国の人々が物事を考える基本的な思想です。医学のみならず、人付き合いなどの身近な事から、一国の治め方までも’’東洋思想”で物事を考えます。それくらい当たり前に人々に根付いた思想です。
中国では、建物だけでなく、お墓の風水も重要です。中国の人々は「ご先祖様のおかげで、今の自分がある」という一族、血族意識がとても強いので、お墓の良し悪しもまた自分の運勢に強く影響していると考えます。日本人的にはなかなか想像し難いことですね。
日本の風水
風水は、平安時代に日本に伝えられ、歴史もあるのですが、東洋医学同様、日本の文化と融合され、怨霊から身を守ることへと礎と形を変えて広められ、日本独自の発展を遂げてきました。
その結果、中国の風水とは全く違ったものとなっています。
最近の日本の風水は「西に黄色を置くと金運アップ」や「お掃除風水」など、インテリアや内装、小物、掃除などについて言及するものが一般的となっていますが、これは近年、中国から再輸入された新しい風水です。運気が上がる「おまじない」のイメージが強いのは、受け入れ安いものが入ってきたことからきているのでしょう。
香港の風水
「運命」の”命”は宿命なので不変のもの、でも”運”は環境の中で作られるので、努力次第で変えることができる!と考えるのが香港人です。
香港の風水は、基本的には地相や家相を診る占いですが、家づくりなど一般家庭の生活に風水を取り入れるのはもちろん、風水を基に街づくりがなされていたりと、あらゆるシーンに風水が尊重されていることが特徴で、風水が人々の生活に浸透している香港ならではの発展を遂げているといえます。
企業に専属の風水師がついていたり、家の周りにできた新たな建築物が、風水的に不都合な場合には、再調整のための「風水対策費」が支給されるという話もあります。
風水でビルを建てる
香港では、建物のど真ん中に吹き抜けを設けた穴開きマンションや龍のお腹の動きのような波型を描く高層ビルがありますが、この独特の佇まいも風水を反映し「龍の通り道」を確保した建造物です。
龍の通り道は「大地のエネルギー」が流れる通路のことで「龍脈」と言われ、その大地のエネルギーが多く集まる場所が、いわゆるパワースポットと呼ばれる「龍穴」です。
「龍脈が通り、大地のエネルギーが豊富に龍穴に溢れる土地」が風水的に「吉」と言われ、ここに住むと一族が永きに渡って繁栄できると考えられています。その龍脈は複雑に曲がれば曲がるほど、枝分かれする本数が多いほど「吉」だそうです。
広く開け遮るものがないビクトリアハーバーに面した香港の土地は、まさに龍脈が通り龍穴に大地のエネルギーが溢れた吉相の地。さらに四方の方角を司る四神(玄武、青龍、白虎、朱雀)に相応した地形が揃っているのが香港島なので、この地には多くの金融機関が集まっています。
特に有名な建造物といえば「カニビル」という愛称で親しまれている香港上海銀行(HSBC)本店の高層ビルで、龍穴上に建っています。
経済都市香港の風水戦争
建設当時はお隣の中国銀行を、完全に見下ろす形となったため、これに中国銀行が対抗したことから勃発したのが風水戦争です。中国銀行は、HSBC方向へ攻撃的な破壊の気を出しているかのような刃をモチーフとした新たな巨大ビルを建設しました。
中国銀行の新ビル建設後、HSBCの業績が悪化したので、HSBCは自社ビル屋上に大砲を模したエレベーターを中国銀行側に向け設置し、風水的に相殺するという策を講じました。この風水対策のおかげなのか、HSBCは再び業績が回復したらしいです。この話の真偽のほどは分かりませんが、香港での風水の影響力の強さが伺えますよね。
香港は今や世界有数の経済都市となりましたが、香港の繁栄は、香港風水がその一翼を担っているといっても過言ではないでしょう。
ここはひとつ香港風水にあやかり、香港風水の人気インテリア、水晶を持った龍の置物や中華らしい赤と黄色の福飾りなどを家の中や玄関に飾り、良い気をいれて開運を願うのも良いかもですね。2022年は、香港風水で開運!寅年!!といきたいところです。