冷え・湿気に悩むあなたへ
漢方薬店kampo’s薬剤師の鹿島絵里です。
「毎年、夏になると体調が崩れる」「梅雨明けから急にだるくなって寝込んでしまう」「夏休み明けには、いつも体力が落ちている気がする」——そんな声を漢方相談の現場でよく耳にします。
病院で検査を受けても「異常なし」、薬を飲んでもすっきりしない。気のせい?年齢のせい?とやりすごしていませんか?
もしかすると、その“毎年くり返す不調”は、あなたの体質と季節の相性に原因があるかもしれません。

Contents
なぜ「毎年同じ時期に体調を崩す」のか?
東洋医学では、季節の変化と体の働きは密接に関わっていると考えます。特に夏は、「暑さ」「湿気」「冷房」「生活リズムの乱れ」など、体にとってはストレスの多い季節。しかも、それにどう反応するかは人それぞれ、体質によってまったく違うのです。
たとえば…
- エネルギー不足(気虚)タイプの人は、暑さで体力を消耗しやすく、夏バテしやすい
- 冷えやすい(陽虚)タイプの人は、冷房や冷たい飲食で内臓が冷えて消化不良になりやすい
- 巡りが悪い(瘀血)タイプの人は、暑さで血行が乱れて頭痛・めまい・だるさを感じやすい
- 水分代謝が悪い(湿困)タイプの人は、湿気でむくみや倦怠感が悪化しやすい
つまり、夏の不調は「気温」や「湿度」などの環境要因に、あなたの体質がどう反応しているかによって起きているのです。毎年くり返すということは、その「反応の仕方」が変わっていない、つまり体質にアプローチしていないということ。
電車の冷房ですぐにお腹を壊す女性の相談
外気温と湿度の高まりを感じるある日、20代の女性からご相談をいただきました。
「電車の冷房がひびいて、乗っている間にお腹が痛くなってしまうんです。最寄り駅までたどり着けなくて、途中下車してトイレに駆け込むことも…」

話を聞いてみると、それは一度や二度ではないとのこと。
さらに、「湿気の時期になると、頭が重くて吐き気もします。天気が悪い日は本当にしんどくて…」と、湿気による不調も抱えていました。
加えて、
- やせ形で食が細く、食事は1日1~2回が普通
- 生理痛が強く、毎月鎮痛剤が手放せない
というお話から、全体の体質像が徐々に浮かび上がってきました。
「脾の虚弱」と「冷えに弱い体質」——漢方がとらえる根本原因
漢方では、食べたものをエネルギーに変え、体の基礎を支える力を「脾ひ」が担っていると考えます。この方の場合、食が細く、消化力が弱いために十分な気血が作られておらず、体力の土台がしっかりしていない状態でした。
また、冷房によってすぐにお腹が痛くなるのは、「体の中を温める力=陽気」が不足しているサイン。こうした状態は「脾陽虚ひようきょ」とも呼ばれ、特に女性ややせ形の方に多く見られます。
さらに、梅雨どきに悪化する吐き気や頭重感は、体に余分な湿気がたまりやすい「内湿ないしつ」の状態です。これは、脾の機能低下によって水分代謝がうまくいっていないことが原因。
つまりこの方は、「脾虚+冷え+湿邪」という3つの要素を抱えていたのです。
処方のご提案:健脾温中+化湿の組み合わせで
今回の体質に対して、以下のような漢方処方を提案しました。
処方例:人参湯にんじんとう+藿香正気散かっこうしょうきさん
- 人参湯:胃腸の虚弱による腹痛・下痢・冷えに用いられる処方です。人参・乾姜・白朮などが、脾胃の働きを温めながら補い、お腹の力を回復させます。附子を使う附子理中湯よりもマイルドで、虚弱な方にはより穏やかに効きやすい処方です。
- 藿香正気散:湿気による吐き気・頭重・食欲不振に対応する処方。体の中にこもった余分な水分(湿邪)を巡らせ、スッキリさせてくれます。
この2つを天候や体調に応じて併用・使い分けしていくことで、冷えと湿気、どちらにも無理なく対応できるようにしました。
また、日常の工夫として、
- 外出時の腹巻き着用
- 冷たい飲食の制限
- 食事の回数を1日3回に近づける
といった小さなことから見直してもらうよう、アドバイスしました。
1か月後のご報告
1か月後、再びご連絡をいただきました。
「最近は電車に乗っても途中で降りずにすむようになってきました。前よりお腹も冷えにくくなった気がします」
「雨の日の頭痛もかなり減りました。以前のように寝込むことが少なくなってうれしいです」
体の中の陽気が少しずつ戻ってきて、湿気にも耐えられるベースが整い始めた様子。さらに続けること数か月後、冷房による腹痛や雨の日の頭痛が解消したことに加えて、生理の度に使っていた鎮痛剤が手放せるほどに体質が改善していました。
不調の根っこに“体質”があると気づいたら
この方のように、症状は一見バラバラに見えても、漢方の視点で見ると**「脾陽虚」と「湿邪」**という共通の原因にたどりつくことがあります。
「食が細いのも」「生理痛が強いのも」「冷房でお腹が痛くなるのも」「雨の日に頭痛が出るのも」——それらすべてが、つながっていたのです。
漢方相談では、そうしたバラバラの不調を一本の線につなげることができます。
毎年くり返すつらさに、そろそろ終止符を打ちたいと感じたら。
検査ではわからない「体質のクセ」に気づき、自分に合った方法で整えていく——そんな選択肢があることを、どうか思い出してください。
「今年も夏がしんどそう…」と思ったら、早めの一歩を

今年の夏も、暑さや湿気、冷房など、体にとってはストレスの多い季節がやってきます。
「また体調を崩すかも」と思っているなら、それは体からのサインかもしれません。
そしてそれは、ただの気のせいではなく、「あなたの体質が季節とうまく合っていない」から起こっている可能性が高いのです。
そのままにしていても、体質は勝手には変わりません。けれど、漢方ならあなたの体質と生活に合わせた、無理のない“整え方”がきっと見つかります。
「夏が来ると不調になるのは、もう仕方ない」とあきらめる前に。
あなたの体質を知ることから、はじめてみませんか?


