今こそ注目したい漢方の力!~インフルエンザやコロナの高熱に~

今こそ注目したい漢方の力!~インフルエンザやコロナの高熱に~

はじめまして。薬剤師・国際中医師の三瓶千穂と申します。
私は勉強するとき、想像を膨らませ、情景をイメージして覚えるようにしています。
漢方薬について、もっと身近な存在に感じてもらえるよう、イメージして作った物語を交えながら、楽しくお伝えできればと思っています。よろしくお願いいたします。

漢方はチームで働く

漢方薬は数種類の生薬が合わさって作られているものが多くあります。それは生薬それぞれの持つ特性を活かして、その時々の“敵”に合わせて挑むよう結成された、最善の“チーム”なのです。
今回は冬に出番の多い『麻黄湯(まおうとう)』について解説します。

麻黄湯は四つの生薬から結成されています。

《チーム麻黄湯》
麻黄(まおう)

桂枝(けいし)

杏仁(きょうにん)

甘草(かんぞう)

どのような場合に結成されたチームなのでしょうか。
麻黄湯の出番を一つの戦が起きたとして例えてみましょう。

麻黄湯を戦で考える

季節は冬。敵は風寒邪気ふうかんじゃき

《風寒邪気とは》

一年を通して襲ってくる「風(ふう)の邪」と、冬になると特に強まる「寒(かん)の邪」

そこに、とある豊かな王宮があります。

王宮の外部に注目してみましょう。

城の外側には王宮を取り囲む城壁があります。それは私たちの体でいうと、一番外側である肌の表面です。
門には守衛がいて私たちの体を外敵の侵入から守っています。また、門を開け閉めして敵が入らないよう、また味方が戦いやすいよう管理しています。

一番外側の城壁・・・【肌表面】
門・・・【腠理(そうり=皮膚の細かい隙間のこと)
守衛・・・【衛気(えき=体表を防御

また、守衛(衛気)は門(腠理)を開け閉めすることで、汗が出るのを調節し体温を管理しています。

そして城の内部では、王宮の中で様々な使用人たちが働いています。

使用人たちは食事を作ったり、掃除をしたりなど王宮全体を忙しく駆け回っています。

この使用人のように、全身を巡り栄養を届ける役割を営気(えいき)といいます。
営気は私たちのからだに必要な血をつくり、全身を養い潤してくれます。

さあ、ついに敵がやって来ました!

戦の始まり敵の襲来!

敵が城壁に沿いながらやって来て守衛を襲い捕らえます!
内部へと侵入し門も塞がれてしまいます。

敵に襲われている!という合図が城の中にも聞こえてきます。

この合図として
ぞくぞくする強い寒気、高い熱、汗が出ない
ような症状が出てくるのです。

そうこうしている内に、中にいる使用人たちも被害が拡大していきます。

使用人、つまり営気に被害が及ぶと、

頭痛、体の節々が痛む、喘息、呼吸困難
このような症状が出てくるのです。

さてついに救世主の登場です!

救世主チーム麻黄湯

チーム麻黄湯は素早く敵を追い払い塞がった門を開放し、捕まった守衛と使用人たちを助け出します。
まさに救世主なのです!

つまり麻黄湯は
塞がった腠理を開いて汗を出し風寒邪気を追い払うとともに肺の機能を改善させます。

《風邪の性質》
軽い、上昇、発散・あちこち移り変化が速い・揺り動く

《寒邪の性質》
冷える・滞る・固まる・収縮する

発汗作用により体表の風寒邪気を追い払うことを発汗解表(はっかんげひょう)
肺の機能を戻し咳・喘息を軽減することを宣肺平喘(せんぱいへいぜん)

と言います。
救世主!麻黄湯のチーム構成をみてみましょう。

チーム麻黄湯の構成

麻黄はチームのリーダーとして門の解除と人々の救出に挑み、桂枝は副リーダーとして麻黄を助け、杏仁もリーダーの麻黄を違う側面から助けます。そして、甘草はそれぞれが快適に存分に力を発揮できるように気配りします。

麻黄-maou-
発汗解表はっかんげひょう・止咳平喘しがいへいぜん
腠理を開き汗を出して風寒邪気を取り除き、咳を鎮め喘息症状を軽減

桂枝-keishi-
解肌発表げきはっぴょう・温経散寒おんけいさんかん

麻黄を助け風寒邪気を取り除く。また、気血の通り道を温め寒邪を取り除く

杏仁-kyounin-
平喘へいぜん・祛痰きょたん

麻黄を助け喘息症状を軽減。また、痰を取り除く

甘草-kanzou-
調和諸薬ちょうわしょやく

全体がよりよく機能するように調整

チーム麻黄湯の決め手

麻黄湯は体力が充実した人汗が自然と出ない状態を麻黄の強い発汗作用によって汗を出させることを目的とします。そのため、体力が低下していて汗が自然と出ているような場合には適しません。

《こんなタイプに麻黄湯》
・体力が充実した人

・かぜやインフルエンザ初期

・ぞくぞくする強い寒気/汗が出ない/高熱/頭痛/体の節々の痛み/喘息/呼吸困難

今回は出典『傷寒論』より「麻黄湯」の使い方をイメージしやすいようにお伝えしました。

冬の養生法として古典名書である『黄帝内経』では

日の出日没と同じく早く寝て遅く起きる。欲望を抑えて、寒さを避け暖かくして過ごす

とあります。
現代なかなか実践するのは難しいですが、せめて寒さを避け日頃の自分の体を労わって暖かく包んであげましょう。チーム麻黄湯の出番がないように日常生活を過ごしていきましょう。

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2000年以上前の古代中国で生まれた中医学。 それが日本に伝わり、
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多くの理論や考え方が派生しています。

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