FOOD LAB代表、薬剤師・国際中医師・国際薬膳管理師の山口りりこです。
2023年は5/6が立夏。
暦の上では夏へと移り変わります。本格的な夏は梅雨明けからですが、夏のお身体づくりをして参りましょう。
Contents
梅雨時期は湿に注意
梅雨時期から、本格的な夏に向けて気をつけたいのは湿(しつ)
私たちは自然界で暮らしているため、季節や気候の影響を身体でダイレクトに受けます。
夏の暑い時に身体に熱がこもる、冬の寒い時には身体が冷える、と同様に…
湿気が多いと体内にも「湿」が影響するものなのです。
湿とは体内の不要な水
身体の水分はいくつかの呼び方があります。
まずは体内に必要なキレイなお水。これを津液(しんえき)といいます。
津液は、皮膚や粘膜へ潤いを与えたり、関節の働きをスムーズにしたり、汗や尿となり老廃物などを排出するなどの働きをしてくれています。
また、体内にある不要な熱を取り除き、火照りを静めるという役割も果たします。(温活ばかり注目されますが、熱がこもっている状態もよくないのです)
津液だけだとスッキリしたお身体を保つことができるのですが、停滞して不要なお水になると「湿」へと変化していきます。
「湿」がさらに進むと、「痰飲」という名前に変わります。
どちらも身体の不調を引き起こす原因となり、巡りをよくして取り除く必要があるものです。
漢方薬を扱う時には、正確に違いが必要なのですが、薬膳だと使える食材も少ないので、ここではひっくるめて「湿」とさせていただきます。
低気圧が苦手な方も要注意
湿度が高い時期に不調を感じる方だけでなく、低気圧で不調になる方も「湿」が停滞していることがほとんどです。
まずは「湿」のことを理解しましょう。
湿の原因
湿となる原因は、大きく分けて2種類あります。
一つは外からの影響です。「外湿(がいしつ)」といいます。
湿気の多い時期・場所、雨に濡れる、水に多く触れる、など環境が違えば起こらないものです。
もう一つは自身でつくりだす「内湿(ないしつ)」です。
私たちは、食べたものを体内に必要な気血水(きけつすい)に変えて生命活動をおこないます。
その気血水に変える場所を「脾(ひ)」といいます。
胃腸と思っていただけると良いかと思います。脾が元気に働かないと、津液になりきらず、停滞して湿を生んでしまうのです。
外湿・内湿は違うものですが、身体に症状が出る時にはそれぞれが影響します。
例えば、
食事や睡眠などはいつもと変わらないのにカラっと晴れた日はスッキリ元気で、曇りで雨が降る前には重だるい。
このような症状は、もともと脾が弱い体質で、環境要因が加わり症状が出てしまった、という具合です。
身体は一部では成り立たないので、原因が絡み合って症状として出てきます。
湿の特性
湿の特性は主に2つあります。
重い・ネバネバ
湿は津液と比べて重濁・粘っこい性質があります。
例えば
・頭が重く締め付けられる
・全身が重く疲労感が出る
・手足がだるくて浮腫む
重だるいようなスッキリしない症状が特徴的で、感覚も鈍くなります。重だるさの代表、二日酔いもこの一種です。
停滞しやすい
湿は体内の気の循環を停滞させます。障害物が多くなるようなイメージです。
胸の苦しさ、食欲不振、シコリ、いぼ、湿疹ができやすくなります。
脂肪もこの一種と言って良いでしょう。
溜め込みやすく、発散しにくい性質があります。そのため、長年溜め込んだ脂肪はなかなか落ちづらいのです。
湿をとる薬膳
食事で身体をよくしていく療法を「薬膳」といいます。
力の強い薬膳ならではの食材から、スーパーで手に入る日常食材までご紹介していきます。
芳香化湿
ホウコウカシツと読みます。香りの良いもので湿気をとばす、という考え方があります。
また、香りの良いものは気の巡りをよくし、食欲増進にも働いてくれるため、梅雨時期以降は重宝されるのです。
紫蘇、大葉、山椒、茗荷、生姜、パクチー、フェンネル、柑橘皮
想像するだけでスッキリ!香りを楽しんでください。
利湿
リシツと読み、余分な水分を排出する、という意味です。
ハトムギ、小豆、大豆、黒豆、とうもろこし、そら豆、枝豆、白身魚
健脾
ケンピと読みます。内湿の原因はほとんどが「脾」にあるため、脾を健やかに保つような食材です。
米、雑穀、ジャガイモ、さつまいも、栗、しいたけ、なつめ
脾を養う味は「甘み」
噛むと甘みを感じられるような食材です。
②の利湿食材も、脾に良いものがほとんどです。豆類も甘みが特徴ですもんね。
ただ、注意はケーキやおまんじゅうのような甘みとは異なります。特にケーキなど洋菓子は脂質が多いため、むしろ脾が疲れてしまいます!自分に都合よく捉えてはいけませんね。笑
湿を増やさない生活
湿の溜め込みやすい環境を減らしていきましょう!
冷たいもの、生もの、油っぽいものは控える
全て控えるのは難しいと思いますので、生ものをとる時には①芳香化湿食材のような薬味をたくさん使う、冷たいものをとる時には温かいスープやドリンクを選ぶ、など工夫してみましょう。
それから、胃腸を休める、というのも一つです。
摂らない養生も大切です。夕食を抜いたり、消化に負担のかからないお粥やスープだけにするなど、胃腸にお休みを与えてあげることも意識してみてください。
梅雨時期、不調なく元気に過ごせますように、是非ご参考ください。
ご質問などあれば、コメント欄にお願いいたします。