ニキビ最前線!現代科学から見る腸と肌

ニキビ最前線!現代科学から見る腸と肌

漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。現代科学と漢方医学の両方の視点で、健康・美容の最前線に迫ります。

吹き出物が多い人は便秘がちとか、腸美人は肌美人、肌は内臓を映す鏡、などなど、腸と肌の関係はあちこちでよく耳にします。実はこの関係、漢方の世界では基本中の基本として多くの初級者向け教科書にも登場します。漢方的に表現すると「肺と大腸の関係」なのですが、この「肺」の中に皮膚(肌)が含まれます。今回は多くの人が悩むニキビに関する新たな知見と、現代医学も気付き始めたニキビと腸の関係に迫ってみたいと思います。

ニキビの原因

美肌の大敵、ニキビですが、生理学的にみる主な原因は3つ、皮脂の分泌過剰、異常なケラチノサイトの落屑による管閉塞、プロピオニバクテリウムによる炎症、です。急に難しい言葉の羅列になりましたが、言い換えれば、皮脂がたくさん出た、代謝が盛んで毛穴が詰まった、アクネ菌たちが悪さした、ということです。ただ、なぜ皮脂がたくさん出たのか、なぜ毛穴が詰まるほど皮膚の代謝が起こったのか、なぜ普通は無害なアクネ菌たちが悪者に変わったのか、その辺が大事です。

アクネ菌のパラダイムシフト

かつてニキビはCutibacterium acnes(いわゆるアクネ菌)の過剰増殖と考えられていましたが、現代ではそうではないことが分かっています。ニキビ患者と健常者のアクネ菌の相対的な存在量は、同程度か、むしろ健常者ではわずかに高いという報告さえあります。ではアクネ菌はニキビに無関係かと言えばそれも違います。

アクネ菌にはファイロタイプと呼ばれるいくつかのアクネ菌仲間がいて、お互いをいい意味で牽制しあって、平和なパワーバランスを維持しています。しかしニキビの重症化している人の顔や背中ではこのパワーバランスが崩れて、あるファイロタイプだけが優勢になったり、ファイロタイプの多様性が乏しくなっているのが確認されています。つまりアクネ菌のファイロタイプ同士でうまくバランスを保ってもらうことが、ニキビ治療や予防に効果的であることが見出されたのです。

他にもアクネ菌たちのパワーバランスに影響を与えるものとして、表皮ブドウ球菌やウイルス等の存在が明らかになっています。この表皮ブドウ球菌もウイルスも常在のもので、それ自体に毒性があるわけではありません。

これまでニキビの治療と言えば抗生物質が代表的なものでしたが、これからは微生物の多様性を回復させたり、彼らの理想的なパワーバランスを取り戻すことに目が向けられていくでしょう。実際、細菌が生み出す物質は、種内および種間のコミュニケーションに関与し、ニキビを含むいくつかのヒト疾患において炎症促進的な役割を果たすことが示されています。したがって、アクネ菌の生産物質の放出を阻害すること、またはそのシグナル伝達経路を標的とすることは、にきびの発症と重症化を抑制する代替的な方法となり得るのです。

欧米型の食事とニキビドミノ

ではアクネ菌をはじめとする菌たちとその環境の変化はどのようにしてもたらされるのでしょうか。ニキビは12歳から25歳までの青年および若年成人の約85%もの人に見られ、特に欧米諸国で多いとされています。となれば食文化がまず気になるところですが、実際に、乳製品、精製炭水化物、チョコレート、飽和脂肪の摂取が、代謝シグナルの活性化を通じてニキビの発症に寄与することが示されています。細胞には栄養状態を感知するセンサーがあり、欧米の典型的な食事に含まれる豊富な炭水化物が、このセンサーを作動させているようです。そこから皮脂腺の過増殖、脂肪生成、肌の表面の細胞の過形成を行うシグナルが発せられ、ニキビに繋がっていると考えられています。

つまり過剰な栄養がスイッチとなって、ドミノのように次々と体の中で反応が起こり、ドミノの最後の駒、ニキビに至ってしまうということです。皮脂がたくさん出ることや毛穴が詰まること、アクネ菌たちが悪者になることもドミノ連鎖の一部です。

成人女性のニキビはアクネ菌とは無関係?

アクネ菌ファイロタイプのバランスが崩れることが、自然免疫を不必要に活性化させて皮膚に炎症を引き起こしニキビを発症させることが分かりましたが、成人女性のニキビではこうしたバランスの変化は観察されません。

実際に漢方治療の診断においても、成人女性のニキビは、10代から20代前半のニキビとは区別して考えます。成人女性のニキビはフェイスラインにできやすく、皮脂腺の多いおでこや鼻などティーンたちの特徴とは違います。さらに生理周期とも連動しやすいことから、ホルモンの変化、自然免疫の刺激、環境要因などに着目した治療が行われます。

現代科学も見出した腸と皮膚の関係

ニキビと腸内細菌

食事がニキビと関係するなら、皮膚だけでなく腸内の菌たちにも、ニキビに悩む人とそうでない人で何か違いはないのでしょうか。予想通り、ニキビに関与する細菌間の相互作用は、皮膚そのものにとどまりません。ニキビ患者は、健康な対照者とは異なる腸内細菌叢を有しています。その傾向は皮膚と同じで、やはり多様性が失われ、一部の菌だけが多くの比率を占めています。

やはり、腸と皮膚は表裏の関係です。

腸から全身へ

腸は全身に通じる多くのシグナルの発生源です。腸内細菌もこのシステムに大いに関与します。腸内細菌たちが産生する物質は腸管を通じて体内に取り込まれ全身を巡りますが、この中にニキビドミノの連鎖のストッパーの役割を果たすものがあるようです。いくつかのストッパーがニキビドミノの数か所にアクセスして、ドミノが倒れてニキビに至るのを防ぐ、というのが新たなニキビ対策のひとつとして実践されつつあります。ここで大事なのは腸内細菌はただいるだけではなくて、彼らに適切な代謝産物を提供してもらうことです。そのためには菌たちのバランスと環境が大事なのは、ここまでのお話を読んでいただければよく理解できることと思います。

また、ドミノの駒のひとつである腸管バリアは、ドミノ連鎖をとめるはずの腸内細菌たちに干渉してきます。腸管バリアが崩れることは、それだけでもニキビ発生へのドミノ倒しですが、さらにドミノ連鎖をとめてくれる腸内細菌たちのバランスをくずして、ブレーキをかけにくくしてしまいます。
環境が環境を呼ぶ、それはいい環境にも悪い環境にもいえること。
やはり、いい環境を作っていきたいですね。

ニキビを腸から治す生活習慣

ニキビを起こすドミノ連鎖をとめたいと思ったら、まず食事内容の見直しが必要です。ニキビドミノを開始するスイッチのひとつは栄養の偏りです。特に欧米型の食事が原因とみられていますから、心当たりがあれば和食中心の食事を意識してみるといいでしょう。
さらに栄養素だけでなく、腸活の面も考慮したメニューがおすすめです。せっかくやるなら栄養面と腸活、二方向からのニキビ対策で効果をあげていきましょう。

また、腸内細菌にうまく働いてもらう方法には食事だけでなく、朝日を浴びたり、適度な空腹の時間を設けることも有効です。

生活習慣を見直して、腸からニキビを改善してみましょう!

【参考文献】Dréno B., Dagnelie M.A., Khammari A., Corvec S. The Skin Microbiome: A New Actor in Inflammatory Acne. Am. J. Clin. Dermatol. 2020;21:18–24.

 

この記事を書いた人

鹿島絵里

株式会社kampo lab菌と生薬の研究家
薬剤師・博士(薬学)
東北大学薬学部を卒業、同大学にて博士(薬学)取得。 研究室で遺伝子と老化の研究をしながら、日々の体調とのリンクが気になり未病を重要視する漢方を学ぶように。 薬日本堂、北里大学東洋医学総合研究所を経て、2020年より漢方薬店kampo’sに所属。 研究リテラシーを生かしながら伝統医療の良さを現代に合わせて発信している。

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