オイル選びのポイントを薬剤師が解説
~前編~
化粧品会社で薬事業務を担当する、薬剤師のあやかです。
脂質と聞くと、いわゆる”油”が思い浮かび、“身体に悪そう“ ”太りそう“ ”ニキビなどの肌荒れの原因になる“ など ”摂ってはいけないもの“ とイメージする方が多いのではないでしょうか?
実は、ホルモンの原料になったり、体温を調節したり、細胞膜を構成したりする大事な5大栄養素のひとつ。また、種類によっては食事から取り入れることが大切だったり、質の良いオイルを取ることで、身体の内側から潤いを保持しお肌のツヤをキープしたりするためにも必要なんです。
今回は良質な脂質の選び方や気を付けたいポイント、活用方法をご紹介いたします。
脂質は脂肪酸の種類によって、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。これは構造に二重結合を含んでいるか、いないかによって分類されます。それぞれの特徴を前編と後編に分けて、説明していきますね。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、炭素間に二重結合のない構造を持ち、鎖状につながる炭素数の長さのちがいから長鎖・中鎖・短鎖脂肪酸に分けられます。分類される脂肪酸としては、炭素数が16個のパルミチン酸や18個のステアリン酸などがあります。主に動物性脂肪やサラダ油に多く含まれ、エネルギー源となります。摂りすぎてしまうと、中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇につながり、肥満などの原因となるので、一般的にイメージされる“油”なのではないでしょうか?
注意したいのは、バターやラード・牛脂などの動物性の脂に含まれる長鎖脂肪酸で、体に蓄積しやすく、過剰な摂取は動脈硬化や脂質異常症などの生活習慣病への関連性が示唆されています。動物性のお肉などから日常的に適量を摂る分には良いものの、摂りすぎや人工的なものはヘルシーな食生活を送るには避けたい成分です。
一方で良質な脂質としておすすめしたいのが、ココナッツオイルとMCTオイルです。以下それぞれの特徴や違いを詳しくご紹介いたします。
ココナッツオイル
ココナッツオイルは、ココナッツの種子に含まれる胚乳から抽出して作られています。中鎖脂肪酸(MCT)は55~60%程度含まれ、残りの40%は長鎖脂肪酸(LCT)という成分で構成されていて、特に炭素数が12個の脂肪酸であるラウリン酸という成分が多く含まれています。ラウリン酸は、中鎖脂肪酸にも分類されますが、長鎖脂肪酸特有のメリットである、免疫力アップ・善玉コレステロールの増加を助ける・ウイルスやカンジダ菌、真菌(カビ)に対する抗菌作用などが期待でき、母乳にも含まれている成分です。
活用ポイント
精製されていないエキストラバージンのものは、ココナッツならではの甘い香りや味が残っています。そのため、お菓子作りや香りを利用した加熱調理に使用するのがおすすめです。精製された無味無臭のものもあるので、サラダ油やバターの代わりに加熱調理で使うのはもちろん、コーヒーやスープなどに入れてみたり、ドレッシングとしてサラダに用いたりもできます。180℃以上の高温には向いていないのですが、酸化しにくく使いやすいオイルです。
ココナッツ特有の甘い香りは気持ちをリラックスさせてくれるとも言われるため、顔やボディのスキンケアへの利用、特に寝る前に使うのもおすすめです。
最近では日系メーカーさんからも販売されているため、スーパーの油コーナーにも置いてあることが多いです。スキンケア用も、植物オイルを取り扱うブランドさんやインターネット販売などで手軽に購入できます。
MCTオイル
中鎖脂肪酸100%の油のことをMCT(Medium Chain Triglyceride)といいます。消化吸収しやすく、すぐにエネルギーとして利用されるため、脂肪として体内に蓄積されにくい脂質です。また、脳にも栄養を与え、パフォーマンスを上げる、アルツハイマーや認知症の領域でも活用できるのではないか、として注目もされています。MCTオイルは、ココナッツオイルやパーム核油に含まれる中鎖脂肪酸(MCT)という成分のみを取り出したオイルで、炭素数が8個のカプリル酸と10個のカプリン酸という中鎖脂肪酸からできています。こちらはココナッツオイルにも含まれるものの、5~6%と少ないというのが大きな違いです。鎖状につながる炭素が少ないほど早く消化吸収され、エネルギーとして代謝されるため、この脂肪酸の炭素数の違いが、MCTオイルの特徴である素早いスピードの消化吸収・エネルギー代謝に影響しているんです。
また、同じココナッツ由来でも、ココナッツ特有の味や香りの成分を含まない無味無臭のオイルという違いもあります。
活用ポイント
ダイエット中の空腹を抑えたいときや運動時のエネルギー補給として使ったり、ココナッツの甘い香りが苦手な方・香りを残したくない料理へ使用したりするのがおすすめです。コーヒーなどのドリンクに入れてみたり、ドレッシングとしてサラダに用いたりと、簡単に取り入れることができますよ。ココナッツオイルよりも熱に弱く、加熱調理にはあまり向いていないので気を付けてくださいね。
輸入品を取り扱う食料品店や、スーパーやコンビニにも置いてあります。最近では日系メーカーさんの商品や専門店もあり、より身近になってきていますね。
実際に適量ってどのくらい?
中鎖脂肪酸のMCTオイルやココナッツオイルは1日に小さじ1杯程度(4.5g~6g)が適量とされています。
MCTオイルは熱に弱いため、加熱調理にはオリーブオイルやグレープシードオイルなどを使うのもポイントです。
脂質を用いたダイエット方法も
「ケトン体ダイエット」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
炭水化物が不足したときには、エネルギーとして利用されることを用いたダイエット方法で、高脂質・高タンパク・低糖質とすることで、脂肪から「ケトン体」という物質を作るように促して脂肪を燃焼させる、という食事によるダイエット方法です。
糖質を極端に制限し、一日の必要エネルギーを脂質でまかないます。そうすると、糖質からエネルギーを得る糖代謝から、脂肪を燃焼することでエネルギーを得る脂質代謝へと導かれます。また、糖質の摂取を極限まで抑えることで、インスリン分泌を抑え、脂肪の合成や蓄積を防ぐ働きをしてくれるのです。これらにより、消費型の体質を短期間で目指し、効率的に脂肪を燃焼することができるとされています。(*長期間行うと健康に悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。体調や健康状態に注意しながら行ってください。)
私たちの身体を作る大事な栄養素の脂質。それぞれのメリット・デメリットを認識することで、ヘルシーな食生活のサポートになりますと幸いです◎