化粧品薬事担当者がポイント解説
化粧品会社で働いている、薬剤師のあやかです。
「オーガニックコスメ」と聞くと“肌にやさしい”“誰でも安心して使える”というイメージがありますよね。実は一概には“オーガニックだから肌に優しくて安心”とは言えず、刺激となる成分が残っている、そもそも成分すべてがオーガニック成分で作られているわけではない、という可能性もあるんです。
また、「ナチュラルコスメ」「自然派化粧品」「無添加化粧品」などの似たような言葉も見かけますよね。
そこで今回は、オーガニックコスメとはそもそも何なのか、日本と海外との違い、選ぶ際に気を付けたいポイントなどをご紹介していきます。
身体への影響だけでなく、環境保護の観点からもますます注目されている自然派製品。オーガニックコスメのメリット・デメリットを把握して、オーガニックコスメを使ってみたかった方はもちろん、普段からオーガニックコスメを使っている方も選択肢の幅が広がって、日々の化粧品選びにご活用いただけますと幸いです。
Contents
オーガニックコスメとは
オーガニックコスメとは、農薬や化学肥料を使わずに栽培された植物由来・有機原料によって作られている化粧品のことです。
「オーガニックコスメ」という言葉ができ、注目されている背景には、“石油原料で作られた日常生活用品に疑問を投げかけ、私たちを真に美しく健康に保つ自然なものを取り戻そう”という運動のひとつがあり、“化学物質であふれる現代の状況を見つめなおし、新たなライフスタイルへと向かうきっかけとなって欲しい”という素敵な思いが背景にあるんです。
そもそも「オーガニック」とは、「有機の」「有機栽培の」という意味です。NGO団体のひとつである日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)では、農薬や化学肥料に頼らず、太陽・水・土地・そこに生物など自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法を指しています。
海外ではさまざまなオーガニック認証機関が存在し、原料となる植物あるいは栽培方法が有機であるかどうかを第三者機関が認定をして、オーガニック認証を取得しています。国や認定機関により異なるものの、化粧品に使われる原料の栽培方法や生産基準、製造工程、肌への安全性など、さまざまな基準から判断され、オーガニックコスメであるかの認証が行われています。
しかし、日本ではこの認証システムが存在していない、明確な判断基準が決まっていないので、有機栽培での植物由来成分を少しでも使用していると、会社の自主判断でオーガニックコスメと謳うことができるのが現状です。
「ナチュラルコスメ」「無添加化粧品」との違いは?
「ナチュラルコスメ」とは、化学合成成分などをできる限り使用せず、自然・天然由来の成分を主に使用している化粧品のことです。「自然派化粧品」とも呼ばれます。
JONAは、オーガニックは人為的な生産や生活の方法であり、ナチュラルは天然物・自然物そのものを指す、としています。
つまり、オーガニックコスメとの違いは、原料となる植物の栽培方法が有機栽培ではない、という点です。
天然物である植物由来の成分やエキスを使った化粧品であり、すべての成分が自然由来ではないことにも注意してくださいね。
「無添加化粧品」とは、一般的に「旧表示指定成分」が配合されていない化粧品のこと。旧表示指定成分とは、薬事法改定前まで厚生労働省が表示を義務付けていた、アレルギーの危険性が認められる102種類の成分で、香料や着色料、防腐剤、界面活性剤などがあり、これらを含んでいない化粧品を「無添加化粧品」と謳うことができます。
製造工程のすべての過程において添加物を使用していないだけで、化学的な成分は含まれている、ということに注意が必要です。こちらは添加物に関して判断されているだけであって、含まれている成分および原料となる植物の栽培方法が有機かどうかには着目していない、というのがオーガニックコスメとの大きな違いですね。
他にも、天然鉱物を主成分とした「ミネラルコスメ」や、人・環境・社会をより良くすることを目的に作られたエシカルコスメなどもあります。
オーガニックコスメのメリット・デメリット
メリット
①化学的な成分による肌への負担が少ない
必ずしもケミカルな成分や合成成分が悪く、肌への刺激が強い、とは言えませんが、化学物質による肌への負担が少なく、ケミカル成分で肌荒れを経験された方・アレルギーを持っている方におすすめです。
②伝統的な植物療法がベースとなっていることが多い
オーガニックコスメは、世界における伝統的な自然療法に基づき、安全性が高い天然成分を使うことをコンセプトに持った化粧品でもあります。
私たちの祖先が植物の持つ治癒力を信じて自然の中から見出した基礎的な美容法や植物療法がベースとなっているため、人間が本来持っている肌の機能に直接にはたらきかけ、肌や身体のバランスを整えると考えられています。
また、中には植物がもつ自然の香りや含まれている精油の香りが心地よいと感じ、リラックスしながらスキンケアできるものも。草木や花のもつ香りの好みは人それぞれですので、商品を選ぶ際には臭覚の点からも自分に合っているかもチェックすることをおすすめします。
③自然への配慮
オーガニックコスメやその原料を作るメーカーの多くが、栽培および製造工程や流通面において、自然環境への負担を減らすことを心掛けています。
動物実験をどの過程においても行わないことはもちろん、ヴィーガンであることも最近では増えてきていますね。また、製品の中身だけでなく、パッケージにおいてもSDGsを考慮していることやリサイクル素材であることなど、環境に配慮しているメーカーも多いです。
デメリット
①植物・精油による刺激やアレルギー
自然由来のエキスや香りがメリットである一方で、それが逆にリスクとなることもあります。芳香成分によっては刺激となったり、植物になんらかのアレルギーがあったりする場合は注意が必要です。
また、精油による香りは、ホルモンに影響を及ぼす可能性があり、デリケートな妊婦さんには刺激となる可能性があります。精油の種類にもよりますが、妊娠中、とくに妊娠初期での使用は控えた方が良いと言えます。
②含有成分がピュアではない
天然の植物エキスや精油に含まれる成分、特に芳香成分は、精製されていない分、様々な物質を含んでいるため、刺激やアレルギーとなるリスクもあります。また、どの成分がどの程度配合されているかは植物の収穫時期や栽培環境によって異なる可能性もあるんです。それに対して、合成成分は天然の物から特定の成分を抽出あるいは作り出したものであるため、純粋な成分であるという考え方もできますよね。
③品質や使い心地が劣る
テクスチャーや使い心地をよくするために開発・配合される化学成分を使わない、あるいは控えている分、自信の肌に合っていないとなじみにくかったり、保湿力がイマイチ、伸びが悪くヨレやすかったりすることも。ケミカルな化粧品を使っていた方がオーガニックコスメに切り替えた場合は、少し使い心地に物足りなさを感じるかもしれません。
また、基本的に防腐剤を使っていないものが多いため、フレッシュな状態で使える分、使用期限が短かいことが多いです。肌トラブルを起こさないために、開封後すぐに使い切る、においや色調の変化に注意しておくことが必要です。
オーガニックコスメで気を付けたいポイント
①オーガニック認証成分の配合量、他の配合成分
化粧品の全成分表示の表示方法等については、厚生労働省が「成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載する。ただし、1%以下の成分及び着色剤については互いに順不同に記載して差し支えない。」として規定しています。
つまり、配合量が多い順に表示されているので、オーガニック認証成分がどのあたりに記載されているのか、他に多く含まれている成分は何かなどチェックしてみましょう。
②認証機関はどこなのか
日本では、正式なオーガニック認証や基準はありませんが、日本オーガニックコスメ協会(JOCA)やECOCERT JAPANなどのいくつかの民間の認証機関があり、厳しい審査基準が設けられています。なかでもECOCERTは、世界的な認証機関のひとつなので、製品に認証マークがあるかをチェックすることで、オーガニックコスメであるかを判断できます。
海外には国・民間による認証機関や共通の基準があります。EU(世界)統一基準である「コスモス認証(COSMOS認証)」は、オーガニックコスメの品質を認証する国際的な制度として存在していますし、アメリカでは「USDA Organic」、オーストラリアでは「ACO」など多岐にわたります。
海外ブランドのものは、こちらのマークがあるかどうかもチェックしてみてくださいね。
生産者や製造過程で関わる人々の労働環境や健康を守ることにつながることや、動物実験を行わないなどの自然・環境保護にもつながることからますます注目を集めているオーガニックコスメ。
皆さんもご自身のお肌の状態を見つめてオーガニックコスメを選んでみるのはもちろん、環境保護や製造過程における会社ごとのこだわりや取り組みなどを学びながら選ぶという楽しみ方もできるので、チェックしてみてくださいね。